経営セーフティ共済という愛称でも知られる倒産防止共済です。
本来は取引先が倒産した際に、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度です。
もしものときには無担保・無保証人で掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで借入れでき連鎖倒産の防止が期待されています。
掛金は損金または必要経費に算入できるため節税効果もあります。
多くの中小企業ではこの節税効果を受けることがメインになっていますね。
今回は倒産防止共済で前納する場合に疑問に思われる可能性がある前納13か月問題について解説してみたいと思います。
なお、基本的な制度の内容は省略しますので倒産防止共済の基本的な内容から知りたい方は中小機構のホームページをご確認ください。
前納の期間が1年以内であれば支払日の損金でOK
倒産防止共済の掛け金の損金算入時期は掛金を支払った日を含む事業年度になります。
将来の掛金を前納した場合も期中に支払いが完了していれば損金算入が可能ということですね。
ただし、前納の場合は前納の期間が1年以内であることが損金算入の条件になっていますので注意しましょう。
加入と同時に1年分の前納をする場合、期末直前でもOK
初年度(当初申込時)は取引のある銀行窓口で加入申込をしてその場で1年分を前納(振込)することが可能です。
極論、決算日(3月決算であれば3月31日)に手続きすることも可能であると思われます。
ただし本当のギリギリですと当日扱いの振込が可能な時間を過ぎてしまっていたり、書類不備があって出直しになると間に合わなくなってしまいますので1週間程度は余裕をもって銀行に行きましょう。
なお、銀行側からしても頻繁にある手続きではないため事前に電話して「倒産防止共済加入の手続きをしたい」旨を伝えておくと当日の手続きがスムーズになると思います。
何を隠そう私は銀行員の立場で急に申込手続き希望のお客様が来店され慌てふためいたことがあります!
既に加入している場合の前納は期末1か月前には手続きを
掛金前納申出書が5日までに中小機構に届けば期末直前の引落日(27日)(休業日の場合は翌営業日)に前納掛金の引落が間に合うとされています。
登録取扱機関の団体または金融機関の窓口に提出して、そこから中小機構に送られることを考慮すると期末の1か月前には手続きを済ませておきたいところです。
なお、登録団体になっている税理士協同組合のホームページにも「払込み希望月の前月末までに本組合必着でご送付ください」と記載されています。
期末に13か月分の納付をしても損金算入できる
新規申込の掛金前納でも既契約の掛金前納申出でも期末に13か月分の掛金を納付することができます。
ここで疑問に思うのが13か月分の前納で損金算入ができるのか?という点です。
この点については法人税法基本通達に以下のように記載されています。
66の11-3 中小企業倒産防止共済法の規定による共済契約を締結した法人が独立行政法人中小企業基盤整備機構に前納した共済契約に係る掛金は、前納の期間が1年以内であるものを除き、措置法第66条の11第1項第2号に掲げる掛金に該当しない。
回りくどい表現ですが前納の期間が1年以内であれば損金に算入できるということです。
そうすると13か月分の前納では損金に算入できないことになりますよね。
ちょっと待ってください、お手元の申込書をよく見てください。
契約申込書も前納申出書も掛金納付額の欄は「(納付月分を含む)」と書いてありますよね。
とすると13か月分を納付することにしても1か月は納付月分で前納が12か月分になると解釈できると思います。
そうすれば前納の期間が1年以内に該当し損金算入できると考えられますよね。
期末の13か月分の納付はお勧めしません!
期末に13か月分の納付をして損金算入できるとしてもそれをお勧めはしません。
なぜなら期末に13か月分の納付をした翌期は期末に中小機構から引落開始のお知らせが来ないからです。
通常、前納期間が終了し毎月の掛金の引落が再開されるタイミングで中小機構からのお知らせハガキが来るんですよね。
このお知らせで「あ、また前納の手続きをしなければ!」ということに気付くのです。
13か月分前納をしているとこのお知らせが来るタイミングが期末ギリギリになるものと思われますので前納の手続きが間に合わない可能性が高いです。
例で考えてみましょう。
2025年3月に13か月分の納付をした場合、納付したのは2025年3月分と2025年4月から2026年3月の12か月の前納ということになります。
そうすると次に納付するのは2026年4月ですよね。
2026年4月の掛金納付タイミングで手続きしても2026年3月期中の前納は間に合わないことになってしまうのです。
期末の納付は12か月分がお勧め!
期末の納付は12か月分がお勧めですね。
上記の例と同じく考えてみましょう。
2025年3月に12か月分の納付をした場合、納付したのは2025年3月分と2025年4月から2026年2月の11か月の前納ということになります。
そうすると次に納付するのは2026年3月ですよね。
この2026年3月にまた12か月分納付するのです。
納付したのは2026年3月分と2026年4月から2027年2月の11か月の前納ということになりますが2026年3月期に損金算入されるのは12か月分ということになります。
こうしてその次の期も期末に12か月分納付して毎期12か月分が損金に入るというサイクルを作ることができます。
初年度13か月、次年度以降12か月の前納も可能
手続き上は前納初年度に13か月分、次年度以降に12か月分の前納をすることも可能です。
※2025年6月2日時点で問題無いことを中小機構に電話確認済
上記の例で改めて考えると、
2025年3月に13か月分の納付をした場合、納付したのは2025年3月分と2025年4月から2026年3月の12か月の前納ということになります。
そうすると次に納付するのは本来は2026年4月になりますが、2026年3月5日までに中小機構に届くように前納申出書を提出すれば、2026年3月27日の引落で2026年4月から2027年3月の12か月分の引落が可能ということです。
契約申込書も前納申出書も掛金納付額の欄は「(納付月分を含む)」と書いてありますが、その点は気にしなくていいとのことです。
まとめ
期末の前納の掛金納付額欄には12か月分と記載しましょうね。
うっかり13か月分と記載してしまうと翌期に掛金の納付が出来なくなってしまいますのでね。
その他の注意点
その他の注意点については以下の記事も参考にしてみてくださいね。
倒産防止共済の注意点まとめ