先日、顧問先の社長様から一般社団法人設立についてのご相談をいただきました。
今回は近年増加している営利型の一般社団法人についてまとめてみたいと思います!
公益法人制度改革の概要
平成20(2008)年に新しい公益法人制度が始まりました。
旧公益法人制度では、
- 主務官庁制のため法人の新規設立が難しい
- 「公益性」の判断基準が不明確
- 営利類似の法人が混在している
などの問題点がありました。
これらの問題点を解決し多様化する社会のニーズに対応するため公益法人制度改革が行われました。
新しい公益法人制度では、法人格の取得が登記のみで可能になり、公益性については法定された基準に基づき、民間有識者が審査して行政庁が認定する仕組みとされることで、法人の自主的・自律的な運営が可能になりました。
設立の間口を広げる一方で公益性の判断基準を明確にし公益性のある法人とそうでない法人を分離したのですね。
法人税法上の区分
さらに法人税の扱いも整理されました。
公益認定を受けていない一般社団・財団法人を3階建ての1階に位置し、非営利型法人以外の法人として株式会社などと同じ普通法人として扱うことになりました。
そして公益認定を受けていない一般社団・財団法人のうちいくつかの要件を満たした「非営利性が徹底された法人」と「共益的活動が目的の法人」については3階建ての2階部分に位置し、非営利型法人として収益事業のみに課税されることになりました。
最後に行政庁の公益認定を受けた公益社団・財団法人を3階建ての3階に位置し、収益事業のみに課税する扱いとしています。
消費税他の税制も含めて株式会社との比較もした表が以下の通りとなります。
| 区分 | 株式会社 | 一般社団・財団法人(1階) | 非営利型法人(2階) |
公益社団・財団法人(3階)
|
| 法人税法上の区分 | 普通法人 | 普通法人 | 公益法人等 | 公益法人等 |
| 法人税課税体系 | 全所得課税 | 全所得課税 | 収益事業課税 | 収益事業課税 |
| 課税所得の範囲 | すべての所得 | すべての所得 | 収益事業 |
収益事業 (公益目的事業を除く)
|
| みなし寄附金 | – | – | – | 適用あり |
| 消費税 | – | 特定収入に係る控除制限あり | 特定収入に係る控除制限あり |
特定収入に係る控除制限あり
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| 利子等に係る源泉所得税 | 課税 | 課税 | 課税 | 非課税 |
| 措法40 譲渡所得の非課税 / 措法70 相続税非課税 | – | – | 一部に適用あり |
適用あり / 適用あり
|
非営利型法人の要件
3階建ての2階に位置する、一般社団・財団法人のうち非営利型法人とされるための要件をまとめると以下のようになります。
非営利性が徹底された法人 (法人税法2九のニイ、法人税法施行令3(1))
- 剰余金の分配を行わないことを定款に定めていること
- 解散したときは、残余財産を国・地方公共団体や一定の公益的な団体に贈与することを定款に定めていること
- 上記1及び2の定款の定めに違反する行為を行うことを決定し、又は行ったことがないこと
- 各理事について、理事とその親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の1以下であること
共益的活動を目的とする法人 (法人税法2九の二口、法人税法施行令32)
- 会員に共通する利益を図る活動を行うことを目的としていること
- 定款等に会費の定めがあること
- 主たる事業として収益事業を行っていないこと
- 定款に特定の個人又は団体に剰余金の分配を行うことを定めていないこと
- 解散したときにその残余財産を特定の個人又は団体に帰属させることを定款に定めていないこと
- 上記1から5まで及び下記7の要件に該当していた期間において、特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを決定し、又は与えたことがないこと
- 各理事について、理事とその親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の1以下であること
株式会社と合同会社も含めた比較
営利型の一般社団法人を検討する場合には株式会社と合同会社も含めた比較をした方がいいですね。
簡単に以下の表にまとめてみました。
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 | 一般社団法人 | 一般財団法人 |
| 持分(出資概念)の有無 | あり | あり | なし | なし |
| 設立に必要な人数 | 1人以上 | 1人以上 | 2人以上 | 1人以上 |
| 設立時に必要な出資金等の額 | 1円以上 | 1円以上 | なし | 300万円以上 |
| 設立費用 | 約24万円 | 約10万円 | 約11万円 | 約11万円 |
| 内訳 | 登録免許税15万円、公証人費用5万円、定款印紙代4万円 | 登録免許税6万円、定款印紙代4万円 | 登録免許税6万円、公証人費用5万円 |
登録免許税6万円、公証人費用5万円
|
| 定款認証 | 必要 | 不要 | 必要 | 必要 |
| 最高意思決定機関 | 株主総会 | 社員総会 | 社員総会 | 評議員会 |
| 業務を執行する役員 | 取締役 | 業務執行社員 | 理事 | 理事 |
| 代表者 | 代表取締役 | 代表社員 | 代表理事 | 代表理事 |
| 役員等の任期 | 原則として取締役2年、監査役4年(10年まで伸長可能) | 原則として任期の定めなし | 原則として理事2年、監事4年 |
原則として理事2年、監事4年
|
※電子定款を利用することで、定款印紙代4万円を節約することが可能です 。
営利型の一般社団法人のメリット
では具体的にどのような点が営利型の一般社団法人で事業を行うメリットになるのでしょうか。
設立費用が安く簡単
株式会社よりも設立時の登録免許税が低く、定款認証も比較的簡素です。
出資者が不要で資本金も不要なため設立が簡単です。
社会的信用を得やすい
一般的に業界団体や職能団体などでの利用実績が多く、公共性のある印象を与えることが可能です。
仮に実態は営利を目的にしていても公益目的と思われて信用を得やすくなります。
営利を目的としないというイメージから、特に教育、医療、福祉など公益性の高い事業においては、株式会社よりも高い社会的な信用を得やすい場合があります。
株式の譲渡問題がない
出資者=株主がいないので、株式売買で経営権が変わる心配がありません。
事業内容に制限がない
公益社団法人等と比較したメリットですが、株式会社等と同じく事業内容に制限がありません。
公益性のない事業も営むことができ、株式会社と同様に収益事業を行えます。
営利型の一般社団法人のデメリット
デメリットも確認しておきましょう。
利益分配ができない
どれだけ利益が出ても社員に配当できず、出資者のインセンティブになりにくいです。
設立に最低2名の社員が必要
株式会社は1人でも設立可能ですが、一般社団法人は2名以上が必要になります。
資金調達手段が限られる
株式発行による資金調達ができず、金融機関からの信用度も低めになる場合があります。
日本政策金融公庫は一部の制度が利用可能ですが、信用保証協会は原則利用できないこととなっています。
ただ、最近は一部の保証協会で一般社団法人や一般財団法人にも制度融資の利用を認めようとうする動きが出てきています。
税制面で優遇がない
公益社団法人等と比較したメリットですが、収益事業のみに課税されるというかたちではなく、全ての事業について株式会社と同様に法人税が課されることになります。
まとめ
一般社団法人が向くケース
- 社会貢献や公益性の高い事業を目的とし、利益を再投資して事業を継続・拡大したい
- 出資者への利益分配を考えていない
- 事業よりも「会員のための活動」「公共性」を強調したい
- 低コストで設立し、自由に活動を始めたい
株式会社が向くケース
- 事業で得た利益を出資者に還元し、将来的に上場や事業規模の拡大を目標としている
- 投資を受けて事業拡大を目指す
- 将来的にM&Aや株式譲渡を見据えている
- 銀行融資や法人取引先の信用が重要
最後に
新規事業を始める際に個人事業か株式会社か合同会社かの検討をされる方は多いですが一般社団の検討される方はまだまだ少ないのではないでしょうか?
場合によっては一般社団法人の方がいいケースもありますのでじっくり検討してみ下さい!




