税理士業務

一般社団法人を活用した事業承継の新しい選択肢!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

近年、一般社団法人を設立・活用して事業承継を行う方法が注目されています。

今回は、そのメリット・デメリット、活用方法などを解説したいと思います。

一般社団法人とは・特徴のおさらい

まず、一般社団法人がどういうものかを簡単におさらいしましょう。

一般社団法人は、営利を目的としない法人形態で、社員(構成員)の意思により運営されます。

株式会社と異なり、出資という概念がなく、株式のような資本の移動が発生しません。

そのため、事業の永続性を確保しやすい特徴があります。

この特徴を踏まえつつ、事業承継用途での活用を考えてみましょう。

一般社団法人の事業承継への活用の流れ

一般社団法人の設立

まず、現経営者が代表理事となる一般社団法人を設立します。

株式の移管

設立した一般社団法人に、承継する対象会社の株式を移管します。

ここで株式の譲渡所得について所得税・住民税が発生することに注意が必要です。

一般社団法人に株式を寄付(贈与)する場合も、寄付(贈与)した個人は時価で売却したとみなされて譲渡所得税等が生じ、一般社団法人は受贈益として法人税が課税されます。

代表理事の交代

後継者が一般社団法人の代表理事に就任することで、一般社団法人を通じて対象会社を実質的に支配します。

一般社団法人を事業承継に使うメリット

以下のようなメリットが想定されます。

議決権の集中と事業の安定化

事業承継で一番の課題となるのが、後継者や親族間で自社株が分散し、会社の経営方針を巡ってトラブルになることです。

一般社団法人を設立し、そこに自社株を保有させることで、議決権を一ヶ所に集中させることができます。

これにより、特定の個人が株を所有することなく、法人が安定した経営基盤を築くことが可能になります。

相続税・贈与税の負担軽減

一般社団法人が自社株を保有している場合、その法人の社員(構成員)が亡くなったり、交代したりしても、一般社団法人そのものが存続するため、原則として相続税や贈与税は発生しません。

ただし、これは特定の要件を満たした場合に限られます。

特定の要件を満たさないと、「特定一般社団法人等」とされ、相続税・贈与税が課税されるため注意が必要です。

「特定一般社団法人等」とは、一般社団法人等のうち、次に掲げる要件のいずれかを満たすものをいいます。

① 相続開始の直前におけるその被相続人に係る同族理事の数の理事の総数に占める割合が2分の1を超えること。

② 相続開始前5年以内において、その被相続人に係る同族理事の数の理事の総数に占める割合が2分の1を超える期間の合計が3年以上であること。

利益の蓄積・運用

事業から得た利益を一般社団法人内に残しながら運用でき、次世代以降の投資資金に回しやすくなります。

ガバナンス・ルール設定

定款・会員規約・理事運営ルールを整備することで、後継者選定・意思決定ルールを明確化できます。

柔軟な役員配置

現経営者を理事・監事に残しながら、徐々に権限移譲を行うような運営も可能となります。

一般社団法人を事業承継に使うメリット(注意点・リスク)

利用を検討する際には下記の観点に注意が必要です。

法人として運営することのコスト

個人で株式を保有し、承継していけば発生しなかった法人運営のコストが発生します。

法人設立費用や毎年の税務申告費用が発生します。

また、利益が発生していなくても法人住民税均等割が年間最低7万円発生します。

理事の任期が最長でも2年(株式会社は最長10年)と短いため、頻繁に役員変更登記が必要になります。

専門家への相談が必要

株式会社や合同会社であれば専門家に相談せずとも運営することが可能ですが、一般社団法人の場合は税務上の扱いの複雑さや運営方法の複雑さなどから税理士・司法書士・弁護士といった専門家と連携しながら進めることをお勧めします。

将来的な法改正リスク

税制や法人制度の改正により、従来のメリットが消滅するリスクも念頭におく必要があります。

属人的株式と一般社団法人

事業承継の手段として、一般社団法人と属人的株式の活用を比較してみましょう。

属人的株式とは?

属人的株式とは、特定の株主に対して、持株数とは関係なく、剰余金の配当や議決権などの内容を個別に定めることができる株式です。

例えば、「この株主が持つ1株には、100個の議決権を与える」といった設定が可能です。

項目 一般社団法人 属人的株式
効力 法人が存続する限り効力が継続するため、半永久的な事業承継対策となります。 議決権の効力が特定の株主個人に帰属するため、その株主が死亡したり、株を譲渡したりすると効力が失われます。
目的 経営権の集約と、相続時における財産分散・相続税負担の軽減を両立させることが主な目的です。 議決権の集中など、特定の株主が持つ権利内容を柔軟に設定することが主な目的です。
手続 法人設立の手続きと自社株の移転が必要です。 会社の定款変更が必要となり、特殊決議(総株主の半数であり、かつ、総株主の議決権の4分の3以上の賛成)という厳しい要件があります。
登記 法律上、一般社団法人の存在は登記されます。 属人的株式に関する定めは登記不要であり、定款を見なければ外部から知られることはありません。

まとめ

一般社団法人を使った事業承継スキームには、メリットがある一方でデメリットや注意点もありますね。

慎重に検討し実行される際は専門家と二人三脚で実行することをお勧めします!

Follow me!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントを残す

*

PAGE TOP