税理士業務

「利益が出た!」時の選択:役員報酬を上げるか、配当を出すか、内部留保するか?

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「毎期多くの利益が出ているけど、この利益をどう活用すべきか……」

多くの中小企業オーナー社長が直面する、嬉しい悩みです。

この悩みに対する選択肢は主に3つあります。

  1. 役員報酬を増額して、社長個人の手取りを増やす
  2. 配当を支払い、株主(オーナー)として利益還元を受ける
  3. 内部留保として会社に積み立て、将来の投資やリスクに備える

「税金が一番安くなるのはどれ?」「会社を強くするにはどうすればいい?」

実は、この問いに「常にこれが正解」という唯一の答えはありません。

会社の成長フェーズや、社長自身のライフプランによって、ベストなバランスは変わるからです。

本記事では税理士の視点からそれぞれのメリット・デメリットを徹底比較し、オーナー社長が「後悔しない決断」をするための判断基準を解説します。


役員報酬を上げる:最も一般的だが「社会保険料」に注意

多くの中小企業において、利益が出た際の第一選択肢となるのが「役員報酬の増額」です。

メリット

  • 法人の節税効果が高い: 役員報酬は(定期同額給与などのルールを守れば)法人の「損金(経費)」になります。利益を報酬として支払うことで、法人税の対象となる利益を圧縮できます。
  • 個人の生活基盤が安定する: 社長個人の資産が増えるため、プライベートの充実や、個人としての資産運用の原資になります。

デメリット・注意点

  • 社会保険料の負担増: 社会保険料(健康保険・厚生年金)は、労使折半を合わせると報酬の約30%に達します。報酬を上げれば上げるほど、税金以上にこの負担が重くのしかかります。
  • 所得税の累進課税: 役員報酬が高額になると、個人の所得税率は最高45%(住民税と合わせて55%)まで上がります。法人税の節税効果より所得税等の課税が上回ることになります。
  • 変更のタイミングが限定的: 原則として期首から3ヶ月以内に決めなければならず、期中に「利益が出たから今すぐ上げる」という柔軟な変更は損金算入の観点から困難です。

配当を出す:社会保険料はかからないが「二重課税」の壁

最近、あえて役員報酬を抑えて「配当」を活用する手法が注目されることもあります。

しかし、そこには特有の落とし穴があります。

メリット

  • 社会保険料がかからない: 配当は「給与」ではないため、社会保険料の算定基礎に含まれません。高額な社会保険料を回避したい場合には有利に働くことがあります。
  • 「上場準備」や「対外的な信用」: 適切に配当を行っていることは、資本政策が整っている証として、一部の金融機関や取引先から評価されることがあります。

デメリット・注意点

  • 二重課税の問題: 配当は、法人税を支払った後の「税引後利益」から支払われます。法人の段階で課税され、さらに個人の段階で所得税がかかるため、トータルの税負担は役員報酬より高くなるのが一般的です。
  • 損金にならない: 役員報酬と違い、配当は会社の経費になりません。したがって、法人税を減らす効果はありません。
  • 自社株評価の上昇: 事業承継を考えている場合、配当を出すことは自社株評価の上昇につながるケースがあります。
  • 手続きの手間: 株主総会の決議や、分配可能額の計算など、会社法上の手続きを厳密に行う必要があります。

内部留保する:会社を強くする「守りの一手」

利益を個人に出さず、会社の中に現預金として留める選択です。

メリット

  • 財務体質の強化: 自己資本比率が高まり、銀行からの融資が受けやすくなります。不況時や急なトラブル(コロナ禍のような事態)に対する「備え」になります。
  • 将来の投資余力: 新規事業の立ち上げ、設備投資、M&Aなど、チャンスが来た時に即座に動ける資金力がつきます。

デメリット・注意点

  • 法人税の支払い: 内部留保をするということは、利益が出ているということ。当然、法人税等(実効税率 約30%前後)を支払った後の金額しか残りません。
  • 「死に金」になるリスク: 目的なく貯め続けるだけでは、資本効率が悪くなります。また、将来的に会社をたたむ際や、個人に引き出す際に結局課税されるため、出口戦略(退職金として支給するなど)が必要です。
  • 自社株評価の上昇: 事業承継を考えている場合、内部留保が増えることは自社株評価の上昇につながります。

徹底シミュレーション:手元に残るお金が最大化するのは?

結局、どのパターンが一番おトクなのでしょうか。簡易的な比較を見てみましょう。

項目役員報酬配当内部留保
会社の経費なるならないならない
社会保険料かかるかからないなからない
所得税・住民税最大約55%最大約55%※なし(法人税等のみ)
主な目的節税・個人資産増加社会保険料削減財務強化・事業投資

※少額配当の申告不要制度、申告する場合も配当控除があるため役員報酬より有利になる可能性が高いです。

「役員報酬」が有利なケース

役員報酬がすでに高く、社会保険料が上限(標準報酬月額の上限)に達している場合や所得税率が上限に達している場合、役員報酬として出すのが最もトータルコストを抑えられます。

「配当」が検討の土台に乗るケース

利益がそれほど大きくなく個人の所得税率が高くない場合、所得税の「少額配当の申告不要制度」や「配当控除」を活用することで、トータルの税負担が抑えられます。

「内部留保」を優先すべきケース

数年以内に大きな設備投資を予定している、あるいは銀行からの格付けを上げて借入条件を良くしたいという「戦略的理由」がある場合です。


オーナー経営者が「ベストな選択」をするための3つのステップ

当事務所が、多くのクライアント企業様のアドバイスを通じて辿り着いた「最適解の導き方」をご紹介します。

ステップ①:まずは「法人」と「個人」を一体で考える

オーナー企業の場合、財布は分かれていても、実質的な資産は「法人+個人」の合計です。まずは「家族と会社全体で、いくらキャッシュを残したいか」を定義しましょう。

ステップ②:5年先、10年先の「出口」を見据える

今は利益が出ていても、将来的に会社を売却するのか(M&A)、子供に継がせるのか(事業承継)、あるいは清算するのか。その「出口」によって、今とるべき戦略は180度変わります。

ステップ③:税理士による「精緻なシミュレーション」

社会保険料、所得税の累進課税、法人税の軽減税率、配当控除……。これらをすべて加味して計算するのは、至難の業です。経営者の感覚だけで決めず、一度具体的な数字でシミュレーションを行うことが、最も確実な対策になります。


まとめ:利益が出た時こそ「経営の質」が問われる

「役員報酬を上げるか、配当を出すか、内部留保するか」

この問いに対するベストな選択は、**「現在の税負担を最小にしつつ、将来の経営戦略に合致した資金配分をすること」**に尽きます。

単なる「税金を減らしたい」という視点だけでなく、社会保険料の負担増、そして将来の事業承継まで見据えた多角的な判断が必要です。

当事務所では、オーナー社長お一人おひとりのライフプランと、会社の財務状況を詳細に分析し、オーダーメイドの利益活用シミュレーションをご提案しています。

「今期、思ったより利益が出そうでどうしようか迷っている」

「一番手残りが多くなる役員報酬の額を知りたい」

そんな悩みをお持ちの経営者様は、ぜひお気軽にご相談ください。

最適な「お金の残し方・使い方」を一緒に考えていきましょう。

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