消費税

インボイス制度の「2割特例」の判定には要注意を!新設法人や新たに消費税を納税する方は特に注意!!

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インボイス制度が開始になってから今月末で半年が経過しますね。

実務上の問題点なども見えてきたころですが、その中の一つとして今回は「2割特例」の判定について解説したいと思います。

複雑でかつ金額的な影響も大きいので新設法人やインボイス制度を機に新たに消費税を納税するようになった方などは常に頭に入れておく必要がありますね。

2割特例とは

2割特例とは、インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になられた方が、消費税の納税額を売上で預かった消費税の2割とすることができる特例です。

具体的な計算例としては税込110万円(標準税率10%)の売上があった場合、消費税を10万円預かっていることになりますが、国へ納税する消費税は2万円(10万円×20%)とすることができます。

2割特例が適用できる期間

2割特例が適用できる期間は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間となります。

個人の場合は令和8年分まで、法人の場合は1年決算を前提にすると最長で8月決算法人が令和9年8月期決算まで使えることになりますね。

2割特例を適用するための手続き

2割特例の適用に当たっては、事前の届出は必要なく、消費税の申告時に申告書に2割特例の適用を受ける旨を記載することで適用を受けることができます。

また、2割特例を適用して申告した翌課税期間において継続して2割特例を適用しなければならないといった縛りはなく、課税期間ごとに2割特例を適用して申告するか否かについて判断することができます。

2割特例の対象者

ここが今回のポイントです。

2割特例が使えるかどうかの判定は非常に複雑です。

基本的な考え方

基本的な考え方は、「インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になった方が対象」ということになりますが具体的なケースをみていくと様々なケースがあります。

2割特例が適用できると思っていたのによくよく見てみたら適用できなかったというケースが最悪のケースです。

今回は「インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になった」にもかかわらず2割特例が適用できないケースを見ていきましょう。

なお、元々課税事業者であった事業者がインボイス発行事業者となった場合であっても、当該インボイス発行事業者となった課税期間の翌課税期間以降の課税期間について、基準期間の課税売上高が1千万円以下である場合など、この後見ていくケースのいずれにも該当しない場合には、原則として、2割特例の適用を受けることができます。

基準期間の課税売上高が1千万円を超える場合

まず基本パターンですね。

基準期間とは個人事業者についてはその年の前々年、法人については、原則として、その事業年度の前々事業年度をいいます。

ざっくりいうと2年前、2期前、ということですね。

2年前、2期前の課税売上高が1千万円を超えていると2割特例が使えないので注意です。

特定期間の課税売上高と給与等支払額がいずれも1千万円を超える場合

特定期間とは個人事業者については前年の1月1日から6月30日までの期間をいい、法人については原則として前事業年度開始の日から6か月の期間をいいます。

ざっくりいうと前年、前期の前半6か月、ということですね。

法人については1期目がぴったり1年間でないケースが多いと思いますがそのような場合は特定期間の判定に注意が必要になります。

今回は詳細な説明は省略しますが実際の判定にあたっては国税庁ホームページなどで確認し、慎重に判定してくださいね。

特定期間の課税売上高と給与等支払額がいずれも1千万円を超えていると2割特例が使えないということですので、課税売上高と給与等支払額のどちらかでも1千万円以下であれば2割特例が使えることになります。

相続・合併・分割があった場合の納税義務の免除の特例により事業者免税点制度の適用が制限される場合

相続・合併・分割があった場合に課税事業者になるケースです。

なお、相続のあった課税期間について、相続により事業者免税点制度の適用が制限される場合であっても、インボイス制度の登録が相続日以前であり、他の2割特例の適用が制限される課税期間でなければ、2割特例の適用を受けることができます。

新設法人(設立1期目・2期目の法人)の期首資本金が1,000万円以上である場合

設立1期目・2期目の法人の期首資本金が1,000万円以上である場合は納税義務が免除されないため、2割特例が使えないことになります。

ポイントは期首の資本金というところですね。

1期目の途中に増資して2期目の期首資本金が1,000万円以上になると2割特例が使えないことになりますが、2期目の途中に増資して3期目の期首資本金が1,000万円以上になる場合は2割特例が使えますね。

もちろんその他の条件もクリアしているという前提ですが。

特定新規設立法人の納税義務の免除の特例により事業者免税点制度の適用が制限される場合

特定新規設立法人とは、平成26年4月1日以後に設立した新規設立法人(基準期間がない法人で、期首資本金が1,000万円未満の法人)のうち、次の1、2のいずれにも該当する法人です。

  1. その基準期間がない事業年度開始の日において、他の者によりその新規設立法人の株式等の50%超を直接または間接に保有される場合など、他の者によりその新規設立法人が支配される一定の場合(特定要件)に該当すること。
  2. 上記1.の特定要件に該当するかどうかの判定の基礎となった他の者およびその他の者と一定の特殊な関係にある法人のうちいずれかの者(判定対象者)のその新規設立法人の当該事業年度の基準期間に相当する期間(基準期間相当期間)における課税売上高が5億円を超えていること。

上記の要件に該当すると2割特例が使えないことになります。

高額な資産を購入等した場合1

「課税選択届出書」を提出して課税事業者となった後、2年以内に本則課税で調整対象固定資産の購入等を行った場合は、その期から3期(その年から3年)は2割特例が使えないことになります。

いわゆる3年縛りの期間内ですね。

調整対象固定資産とは、一の取引単位につき、課税仕入れ等に係る支払対価の額(税抜)が100万円以上の棚卸資産以外の資産をいいます。

なお、免税事業者に係る登録の経過措置(28年改正法附則44④)の適用を受けて適格請求書発行事業者となった場合は、「課税選択届出書」の提出をして課税事業者となっていませんので、これに該当することはありません。

高額な資産を購入等した場合2

新設法人及び特定新規設立法人の特例の適用を受けた課税期間中に、本則課税で調整対象固定資産の購入等を行った場合はその期から3期(その年から3年)は2割特例が使えないことになります。

高額な資産を購入等した場合3

本則課税で高額特定資産の購入等を行った場合(棚卸資産の調整の適用を受けた場合)はその期から3期(その年から3年)は2割特例が使えないことになります。

高額特定資産とは、一の取引単位につき、課税仕入れ等に係る支払対価の額(税抜き)が1,000万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産をいいます。

課税期間を短縮している場合

「課税期間特例選択届出書」の提出により、課税期間を一月又は三月に短縮している課税期間は2割特例が使えないことになります。

2割特例は本則課税など複雑な計算ができない小規模事業者の事務負担を考慮して設けられた面もあるため、課税期間の短縮に対応できる事業者は本則課税の計算もできるとして2割特例は適用できないこととしたようです。

その他の注意点

その他、2割特例適用上の注意点は以下の通りです。

課税事業者選択届出書の提出により、課税事業者となっていても適用可

2割特例は、課税事業者選択届出書の提出により、課税事業者となっている方も適用できます。

ただし、インボイス制度の開始前である令和5年9月30日以前の期間を含む課税期間の申告については、2割特例の適用を受けることはできません。

適格請求書発行事業者の登録申請書を提出した事業者であって、「課税事業者選択届出書」の提出により令和5年10月1日を含む課税期間の初日から課税事業者となる事業者については、当該課税期間中に「課税事業者選択不適用届出書」を提出することにより、「課税事業者選択届出書」を失効させることができます。

この場合、当該登録申請書の提出により、適格請求書発行事業者となった場合においては、登録日から課税事業者となり、当該課税事業者となった課税期間から2割特例を適用できることとなります。

なお、「課税事業者選択不適用届出書」を提出しない場合であっても、令和5年10月1日を含む課税期間の翌課税期間以後については、基準期間の課税売上高が1千万円以下である場合には、上記の2割特例が使えない期間に該当しない限り、2割特例を適用することができます。

簡易課税選択届出書を提出していても適用可

2割特例は、本則課税と簡易課税のいずれを選択している場合でも、適用することが可能です。

そのため、簡易課税制度の適用を受けるための届出書を提出していたとしても、申告の際に2割特例を適用することが可能です。

「2割特例」後に簡易課税制度を選択する場合

2割特例の適用を受けた事業者が、2割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間中に、簡易課税制度選択届出書を提出したときは、その提出した日の属する課税期間から簡易課税制度の適用を受けることができます。

通常、簡易課税制度の適用を受けようとする場合は、適用を受けようとする課税期間が始まる前(前課税期間中)に簡易課税制度選択届出書を提出しなければなりませんが、2割特例後の期間については特例が設けられているんですね。

まとめ

実はこれらの判定(課税期間短縮の場合は除く)は今までは消費税の納税義務者になるか、の判定で使われていたものなんですよね。

インボイス制度が始まって、多くの法人が1期目から消費税の納税義務者になるため今まで慎重に検討していた納税義務者になるか否かの検討をしなくてよくなったと安心している税理士の方も多いのではないでしょうか?

実は同じ判定を2割特例が適用できるか否か、という点からしなければならないので今まで通り慎重な判断が求められることにご注意ください!

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