消費税

国外IT企業が提供するサービスの消費税について(海外SaaSの消費税について)

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インボイス制度が始まってそろそろ1年になりますが判断がややこしいものが改めて明確になってきましたね。

そのうちの一つが国外IT企業が提供するサービスです。

当ブログでも国外IT企業が提供するサービスの消費税についてはよく解説していますが改めてその扱いを整理してみました。

電気通信利用役務の提供に該当

消費税の基本的な考え方ですが、まず、国外IT企業が提供するオンライン上のサービスは基本的には「電気通信利用役務の提供」に該当します。

電子書籍・音楽・広告の配信などの電気通信回線(インターネット等)を介して行われる役務の提供が「電気通信利用役務の提供」とされています。

取引がとこで行われたかの判定に改正がありました

消費税は日本国内での消費に対して課される税金ですので国外で行われた取引には課税されません。

その取引が国内取引になるのか国外取引になるのかは様々な判断基準がありますが「電気通信利用役務の提供」については平成27年の消費税法改正前はサービスを提供する事業者の本社が国内にあるのか国外にあるのかで判定していました。

よって平成27年の消費税法改正前は国外IT企業が提供するサービスは本社が国外にあるため国外取引になり消費税は課税されていませんでした。

改正後はサービスの提供を受ける事業者の本社が国内にあるのか国外にあるのかで判定することになりましたので国外IT企業が提供するサービスであってもサービスの提供を受ける事業者が日本に本社がある企業であれば国内取引になり消費税が課税されることになりました。

リバースチャージ方式が基本

国外IT企業の「電気通信利用役務の提供」に日本の消費税が課税されることになりますが国外IT企業はどのように日本の消費税を申告納付すればよいのかという問題が生じます。

日本の国税側も日本に本社の無い国外事業者の消費税について申告漏れを指摘するのは大変ですよね。

そこで採用されたのがリバースチャージ方式です。

詳細な説明は省略しますがリバースチャージ方式ではサービスの提供を行った事業者(=消費税の課税売上が計上されて代金を受け取った事業者)ではなく、サービスの提供を受けた事業者(代金を支払い消費税の課税仕入れを計上する事業者)が消費税を申告納付することになります。

サービスの提供を受けた国内事業者がサービスの提供を行った国外事業者に代わって消費税の申告納付をすることになるのです。

リバースチャージ方式には経過措置がある

当期の課税売上割合が95%以上である事業者や簡易課税制度が適用される事業者については、当分の間、リバースチャージ方式は適用されません。

課税売上を納付する必要が無い一方、課税仕入も適用できませんので消費税は対象外と考えて差し支えないでしょう。

消費者向けの取引は国外事業者が申告納税する

国外の事業者が国内に向けて「電気通信利用役務の提供」を行った場合、国内の「電気通信利用役務の提供」を受けた事業者がリバースチャージ方式で申告納税することが基本となるのですが、これは事業者向け取引、つまりBtoB取引に限っての取り扱いです。

消費者向け取引、つまりBtoC取引については「電気通信利用役務の提供」を受けた人が日本の消費者なので申告納税をしない(できない)ことになります。

結果的にBtoBであってもその取引が消費者も利用できるような内容の取引であれば消費者向け取引とされて「電気通信利用役務の提供」を受けた事業者はその取引にかかる消費税の申告納税をしなくてもいいことになりますが反面、支払った経費は消費税の仕入税額控除が適用できないことになります。

消費者向けの取引で仕入税額控除が適用できる場合

消費者向けの取引で仕入税額控除が制限される理由は消費税を預かった国外事業者が本当に日本に消費税を納税するかどうか不確かだからです。

ただ、例外的に消費者向け取引でも仕入税額控除が出来る場合があります。

それが、国外事業者がインボイス制度の登録事業者になっている場合です。

そしてインボイス(適格請求書)の発行を受けたものについては仕入税額控除が適用できることになります。

国外事業者がインボイス制度の登録事業者になっているということはその国外事業者が売上で預かった消費税を日本に納税しているということなので支払った事業者については仕入税額控除が適用できるというわけです。

消費者向けの取引でインボイスが無い場合

インボイスが無い場合は原則的には仕入税額控除適用不可ということになります。

一方で少額特例の経過措置の適用を受けることができる場合は仕入税額控除が可能になります。

少額特例とは基準期間(一般的には2期前)の課税売上高が1億円以下又は特定期間(一般的には前期の前半の半年間)の課税売上高が5千万円以下である場合、1万円未満の取引についてはインボイスの保存が不要で仕入税額控除を適用することができるというものです。

この場合は一定の事項が記載された帳簿のみの保存で仕入税額控除を適用することができますので区分記載請求書等の保存も不要です。

ただし令和5年10月1日から令和11年9月30日までの期間限定の経過措置になりますのでご注意くださいね。

事業者向けと消費者向けの判別

事業者向けと消費者向けの判別は、範囲の狭い事業者向けを理解し、それ以外が消費者向けと考えればOKです。

事業者向け取引について国税が示している考え方は以下の通りです。

広告の配信やゲーム・ソフトウェアの販売場所を提供するサービスなどは事業者向け取引になる

広告を配信するというということは事業をしているから、何かしらを販売する行為は事業になる、という考えに基づくものです。

Google Adwordsやindeed、Facebook・Instagramなどはこの考え方にあたり事業者向け取引になります。

事業者間で個別に契約しているもの

事業者と事業者で個別に契約をしていればそれはBtoBと考えて問題ありません。

上記2つ以外は基本的には消費者向け取引

上記2つ以外は基本的に消費者向け取引になると考えて問題ありません。

Google WorkspaceもAWSもZoomもこの考え方で消費者向け取引になっています。

Google WorkspaceもAWSもZoomも利用しているのはほとんどが事業者だと思いますが広告などでなく個別の契約もないため消費者向け取引になります。

インターネットのWEBサイトから申し込みを受け付けるようなサービスは個別の契約とはされないのです。

例え「事業者向け」であることをWEBサイトに記載していても事業者以外(消費者)から申し込みがあった際にその申し込みを事実上制限できないものは消費者向けにするという考え方です。

Google Adwordsは国内事業者になった

国外IT企業が提供するサービスでも国外IT企業の日本法人が提供するサービスは国内事業者が提供するサービスとして消費税は全て課税取引になりますので注意が必要です。

Google Adwordsは以前は「Google Asia Pacific Pte. Ltd.」という国外事業者が提供していたため国外事業者が行う事業者向け電気通信利用役務の提供としてリバースチャージ方式が採用されていました。

しかし2019年4月1日から日本の法人である「Google合同会社」がサービスを提供することになったため国内事業者が提供する電気通信利用役務の提供として単純な課税仕入れになりました。

国外IT企業に見えても実態は日本法人の可能性がありますので請求書等をよく確認しましょう。

SHEIN・Temuなどは電気通信利用役務の提供に該当しない

SHEIN・Temuなどは商品の輸入に該当するため電気通信利用役務の提供には該当しません。

輸入に該当した場合は輸入許可通知書があれば課税仕入OK、輸入許可通知書がなければ課税仕入NGになります。

このあたりの詳細は以下の記事にまとめていますので併せてご確認ください。

SHEIN・Temuの消費税、インボイス対応、仕入税額控除はできない!?

フローチャートで確認

上記の考え方をフローチャートにまとめましたのでご参考になれば幸いです。

まとめ

かなりややこしいですよね。

経過措置などもあり、今後も考え方が変わることになりますので常に最新の法令等をご確認のうえご判断ください!

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