ここ数年、Udemyという社名をよく見かけるようになりましたよね。
米国に本社を置くUdemy社が提供するUdemyは、オンラインの教育プラットフォームです。
2010年に設立、2011年よりサービスがスタートしたUdemyは、ビジネス、プログラミングから料理やヨガまで、ジャンルを問わないさまざまなコースがあり、世界中で利用されているサービスですね。
Udemyは日本でのサービス展開はベネッセと提携して行っている部分もありますがUdemyのサービスを直接利用することも可能ですので消費税の扱いに注意が必要です。
電気通信利用役務の提供に該当
消費税の基本的な考え方ですが、まず、Udemyオンラインコースは「電気通信利用役務の提供」に該当します。
電子書籍・音楽・広告の配信などの電気通信回線(インターネット等)を介して行われる役務の提供が「電気通信利用役務の提供」とされています。
Udemyオンラインコースはオンライン上で利用できるサービスなので「電気通信利用役務の提供」ということになります。
取引がとこで行われたかの判定に改正がありました
消費税は日本国内での消費に対して課される税金ですので国外で行われた取引には課税されません。
その取引が国内取引になるのか国外取引になるのかは様々な判断基準がありますが「電気通信利用役務の提供」については平成27年の消費税法改正前はサービスを提供する事業者(今回のケースではUdemy社)の本店が国内にあるのか国外にあるのかで判定していました。
ですので平成27年の消費税法改正前はUdemy社の本社が国外にあるためUdemyオンラインコースは国外取引になり消費税は課税されていませんでした。
それが改正後は「電気通信利用役務の提供」はサービスの提供を受ける事業者の本社が国内にあるのか国外にあるのかで判定することになりましたので日本に本店のある企業がUdemyオンラインコースを利用する場合は国内取引になり消費税が課税されることになりました。
リバースチャージ方式が基本
国外の事業者の「電気通信利用役務の提供」に日本の消費税が課税されることになりますが国外の事業者は日本に本社がありませんのでどのように消費税を申告納付すればよいのかという問題が生じます。
日本の国税側も日本に本社の無い国外事業者の消費税について申告漏れを指摘するのは大変ですよね。
そこで採用されたのがリバースチャージ方式です。
詳細な説明は省略しますがリバースチャージ方式ではサービスの提供を行った事業者、つまり課税売上が計上されて代金を受け取った事業者ではなく、サービスの提供を受けた事業者、代金を支払い課税仕入れを計上する事業者が消費税を申告納付することになります。
国内事業者が課税売上の納付と課税仕入の控除を同時に申告するイメージですね。
消費者向けの取引は国外事業者が申告納税する
国外の事業者が国内に向けて「電気通信利用役務の提供」を行った場合、リバースチャージ方式で国内の「電気通信利用役務の提供」を受けた事業者が申告納税することが基本となるのですが、これは事業者向け取引、つまりBtoB取引に限っての取り扱いです。
消費者向け取引、つまりBtoC取引については「電気通信利用役務の提供」を受けた人が日本の消費者なので申告納税をしない(できない)ことになります。
結果的にBtoBであってもその取引が消費者も利用できるような内容の取引であれば消費者向け取引とされて「電気通信利用役務の提供」を受けた事業者はその取引にかかる消費税の申告納税をしなくてもいいことになりますが反面、支払った経費は消費税の仕入税額控除が適用できないことになります。
消費者向けの取引で仕入税額控除が適用できる場合
消費者向けの取引で仕入税額控除が制限される理由は消費税を預かった国外事業者が本当に日本に消費税を納税するかどうか不確かだからです。
ただ、例外的に消費者向け取引でも仕入税額控除が出来る場合があります。
それが、国外事業者が日本の国税庁に登録して、日本の消費者から預かった消費税を日本に申告納税する「登録国外事業者」になっている場合です。
現在「登録国外事業者」になっている外国法人のリストは国税庁ホームページにアップされています。
「登録国外事業者」で検索すればすぐ出てきますよ。
もう一つ確認すべきは請求書に「課税資産の譲渡等を行った者が消費税を納める義務がある旨」の記載があるかです。
もう少し簡単に言うと「サービス提供業者が消費税の申告を行う」旨の記載です。
さらにざっくり言うと「当社が日本の消費税を納めます」ということです。
これらの確認作業を経て、初めて仕入税額控除が適用できるというわけです。
事業者向けと消費者向けの判別 Google Adwords・AWSは?
事業者向けと消費者向けの判別は、範囲の狭い事業者向けを理解し、それ以外が消費者向けと考えればOKです。
事業者向け取引について国税が示している考え方は以下の通りです。
広告の配信やゲーム・ソフトウェアの販売場所を提供するサービスなどは事業者向け取引になる
広告を配信するというということは事業をしているから、何かしらを販売する行為は事業になる、という考えに基づくものです。
Google Adwordsはこの考え方にあたり事業者向け取引になります。
お手元のGoogle Adwordsの請求書等をご覧いただくと登録国外事業者番号などが記載されていないと思います。
事業者間で個別に契約しているもの
事業者と事業者で個別に契約をしていればそれはBtoBと考えて問題ありません。
上記2つ以外は基本的には消費者向け取引
上記2つ以外は基本的に消費者向け取引になると考えて問題ありません。
Google WorkspaceもAWSもこの考え方で消費者向け取引になっています。
Google WorkspaceもAWSも利用しているのはほとんどが事業者だと思いますが広告などでなく個別の契約もないため消費者向け取引になります。
インターネットのWEBサイトから申し込みを受け付けるようなサービスは個別の契約とはされないのです。
例え「事業者向け」であることをWEBサイトに記載していても事業者以外(消費者)から申し込みがあった際にその申し込みを事実上制限できないものは消費者向けにするという考え方です。
Google Adwordsは国内事業者になった
Google Adwordsは以前は「Google Asia Pacific Pte. Ltd.」という国外事業者が提供していたため国外事業者が行う事業者向け電気通信利用役務の提供としてリバースチャージ方式が採用されていました。
しかし2019年4月1日から日本の法人である「Google合同会社」がサービスを提供することになったため国内事業者が提供する電気通信利用役務の提供として単純な課税仕入れになりました。
今までの処理とは異なる処理になりますのでご注意ください。
Udemyオンラインコースは「消費者向け電気通信利用役務の提供」に該当
だいぶ脱線しましたがUdemyオンラインコースは「消費者向け電気通信利用役務の提供」に該当します。
事業者が社内研修として利用することもありますが消費者が利用するケースも多いですよね。
消費者が利用するケースが少しでもあれば「消費者向け電気通信利用役務の提供」になります。
そしてUdemy社は「登録国外事業者」になっていなかったので消費税は課税仕入れNGということになっていました。
仕訳で考えてみよう
国外事業者からの仕入れについて各ケースごとに仕訳をまとめてみました。
なおUdemyオンラインコースは②になっていたということですね。
Udemy Businessは従前から消費税課税仕入OK
米国に本社を置くUdemy社が提供するUdemyオンラインコースは上記の通り消費税課税仕入NGになっていましたが、Udemy Businessは販売窓口が日本に本社がある株式会社ベネッセコーポレーションになっていますので通常の国内取引として消費税課税仕入OKにです。
2023年10月以降はインボイス登録番号があるか否かで判断
登録国外事業者制度については、「適格請求書等保存方式」(インボイス制度)の導入に伴い、2023年10月1日に廃止されます。
ただ2023年9月1日において登録国外事業者であって、「登録国外事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を提出していない場合は、2023年10月1日に適格請求書発行事業者の登録を受けたものとみなされます。
基本的には現在の登録国外事業者はそのままインボイス制度の適格請求書発行事業者にスライドすることが予想されますが念のため2023年10月1日に適格請求書発行事業者になっているかの確認は必要ですね。
Udemyは登録国外事業者になっていなかったので引き続き適格請求書発行事業者にもならないことが予想されていましたが2023年10月1日から適格請求書発行事業者になっていました。
もし適格請求書発行事業者になったため2023年9月30日までの扱いから一転、Udemyオンラインコースは消費税課税仕入OKということになりましたね。
インボイス制度開始後の扱いについては以下の記事にまとめましたので併せてご確認いただけますと幸いです。
インボイス制度開始後のリバースチャージ方式と登録国外事業者について
まとめ
かなりややこしいですよね。
考え方は難しいですがざっくりと結論をいうと、Udemyオンラインコース・Udemy Businessともに現在は消費税課税仕入OKと理解しておきましょう!