今回はASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダ)がアフィリエイターにアフィリエイト報酬を支払う際に所得税を源泉徴収して支払うべきか否かについてです。
源泉徴収とは
一番馴染みがあるのはお給料を貰う際に引かれる所得税ですよね。
給料以外にも私たち税理士や弁護士、司法書士などの専門家報酬なども源泉徴収されて支払われます。
どんな支払いに源泉徴収が必要かは所得税法に規定されていますので逆に言えば所得税法に規定されていない支払いは源泉徴収不要になりますね。
何故源泉徴収されるのか
所得税法に源泉徴収して払えと規定されているから源泉徴収されるわけですが何故そんな制度が法律上規定されたのか。
大きく分けて2つかなと。
1.給与所得者(サラリーマン)が確定申告不要になるために
日本の就業者に占めるサラリーマンの割合は時代や集計方法によって異なりますがだいたい8割~9割の間で推移しているようです。
日本は申告納税制度を採用していますので原則的には仕事をして稼いでいる人は確定申告が必要なわけですが全員が確定申告をしたら税務署がパンクしてしまいますね。
そこでサラリーマンは会社が給料の支払い時に所得税を源泉徴収して、さらに年末調整で年間税額を計算することで確定申告を不要にしているのです。
2.税金が国に入る時期に偏りをなくすため
日本の税収で所得税の占める割合は大きいです。
年によって法人税や消費税に抜かれたりもしていますが基本はナンバーワンですよね。
法人税は会社の決算後2か月以内の納税なので決算月のばらつきにより税収のタイミングもばらけます。
しかし所得税は日本中全ての個人が3月15日を期限に納税します。
年に1度のタイミングに偏ってしまうんですよね。(予定納税がありますが…)
そこで毎月一定の税収を確保するために源泉徴収制度が導入されたといわれております。
アフィリエイト報酬は源泉徴収すべきか
少し話が脱線しましたがここからが本題です。
事実としてアフィリエイト報酬から所得税を源泉徴収して支払っているASPは存在するようです。
源泉徴収するには所得税法に規定されている必要がありますが所得税法上アフィリエイトという文言は記載されていません。
他の税理士の方が解説しているブログ記事などを見るとどうやら次の条文に該当すると考えられるとのことです。
所得税法第204条1項4号
職業野球の選手、職業拳闘家、競馬の騎手、モデル、外交員、集金人、電力量計の検針人その他これらに類する者で政令で定めるものの業務に関する報酬又は料金
野球はあるけどサッカーはないとか(所得税法施行令にサッカーもあります)、職業拳闘家という表現が気になってしまいますが、アフィリエイターはここでいう外交員に該当すると考えられているようです。
外交員とは
外交員とは、事業主の委託を受け、継続的に事業主の商品等の購入の勧誘を行い、購入者と事業主との間の売買契約の締結を媒介する役務を自己の計算において事業主に提供し、その報酬が商品等の販売高に応じて定められている者をいう
と、解されています。
事業主の委託を受け
→ASPの委託を受けているといえますかね。自分でASPに登録したりしますが結果的には委託を受けているといえるかもしれないですね。
継続的に
→ブログ等に掲載したら継続的にインターネット上に公開されるので継続的ですかね。
事業主の商品等
→ここは微妙ですね。事業主がASPと考えるとASPの商品ではないですもんね。事業主が広告主と考えると該当しますかね。
購入の勧誘を行い
→ここも個人的には微妙かなと。購入の勧誘はしてないですよね。商品の紹介はしているかもしれませんが購入者に直接接点をもって働きかけているわけではありませんから。
購入者と事業主との間の売買契約の締結を媒介する役務
→ここも微妙です。該当しているといえばしているのでしょうか。売買契約の締結を媒介、、、うーん。
自己の計算において事業主に提供し
→自己の計算=自分の経済活動として、と理解すればよいでしょうね。これは該当しています。
その報酬が商品等の販売高に応じて定められている
→ここは完全に当てはまってますね。販売高でなくてクリック数に応じてとかであれば逃げられるでしょうか。
結論
上記の当てはめの通り微妙な点もありますが個人的には源泉徴収は不要と考えてます。
事業主をASPとするか広告主とするかでいずれかの要件は外れますしね。
そもそもこの外交員って保険の外交員がメインであとは不動産のフリーの外部営業マンとかそういうイメージですから。
あとは某ASPのHPに以下の記載があります。
国税庁より「支払調書の作成および発行は不要」との指導を受けております
源泉徴収が必要な報酬を支払うと支払調書を作成して税務署に提出する必要があるんですよ。
支払調書の作成不要の指導を受けたというのは大きいですね。
もう一つ私は過去に上記とは別の某ASPの税務を見ていたことがありましてその会社に源泉所得税の調査が入った際にアフィリエイト報酬については何も言われなかったんですよね。
本業がASPでしたので国税庁の中でアフィリエイト報酬は源泉徴収すべきという整理がなされていれば指摘されていたのかなあと。
源泉徴収不要というお墨付きをいただいたわけではないので何とも言えませんが。
さらに過去の判例を見てもこの論点で争っているものが無いというのもありますね。
税務調査で指摘されたという話も聞きませんし。
アフィリエイトの市場規模が2,000億円を突破したという記事も見かける中、国税庁が源泉徴収について何も触れないというのは当然に源泉徴収不要という整理がされているのか、はたまた検討中でどこかのタイミングで取り扱いなる文章を公表するのか。
今回の論点は国税庁の公式見解が出されていないので皆様もご自身でよく考えて結論付けてみてください。