先日のニュースです。
イタリア製バイオリンの名器「ストラディバリウス」を減価償却資産として減価償却費を損金算入(経費計上)していたことが国税に指摘され修正申告に至ったとのことです。
修正申告額約20億円、追徴税額約5億円の大型案件です。
減価償却資産とは
【法人税法第2条第23号より】減価償却資産 とは 建物、構築物、機械及び装置、船舶、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産で償却をすべきものとして政令で定めるものをいう。
【法人税法施行令第13条より】法第2条第23号(減価償却資産の意義)に規定する政令で定める資産は、棚卸資産、有価証券及び繰延資産以外の資産のうち次に掲げるもの(事業の用に供していないもの及び時の経過によりその価値の減少しないものを除く。)とする。
楽器は減価償却資産?
楽器は通常、器具及び備品として減価償却資産になります。
以下が減価償却資産の耐用年数等に関する省令からの抜粋です。
楽器は通常5年で償却することになります。
ココイチ創業者の担当税理士はおそらくこの耐用年数省令を確認し5年で償却していたものと思われます。
しかし、減価償却資産の定義の赤字部分をもう一度確認してみましょう。
時の経過によりその価値の減少しないものを除く
時の経過により価値の減少しないものは減価償却資産から除かれるため減価償却が出来ないことになっています。
法人税法基本通達7-1-1ではその例として美術品が挙げられています。
ストラディバリウスは楽器であり美術品といえるか分かりませんが上記通達に当てはめてみると
(1)歴史的価値・希少価値があり代替性がない
(2)(1)に該当せずとも1点100万円以上で時の経過により価値の減少が明らかではない
となりやはり減価償却資産には該当しなさそうですね。
税理士の責任は?
ココイチ創業者宗次氏は「当時の顧問税理士に楽器を「減価償却できる」と言われ、税の知識が無く信じてしまった。反省している。税理士への法的措置を検討する」と話しているようです。
条文の解釈が不十分、税理士のミスと言わざるを得ません。
いわゆる税賠、税理士職業賠償責任に該当するでしょうね。
訴訟になれば賠償命令が下されることでしょう。
木嶋真優さんのストラディバリウスはどうなる?
木嶋真優さんが某テレビ番組でご自身のストラディバリウスはココイチ創業者から借りているものと話していたそうで、そのストラディバリウスが今回の件でどうなるか気になる方もいらっしゃるかと思います。
ココイチ創業者宗次氏が追徴税額を払えない、なんてことになればストラディバリウスを差押え、となり木嶋真優さんはストラディバリウスが使えなくなる可能性もありましたが、既に修正申告をし追徴税額も納付済みとのことで心配ないですね。
今後も木嶋真優さんのストラディバリウスの演奏を聴くことができます。
まとめ
税法の解釈は難しいものです。
今回は比較的シンプルで分かりやすいものですが深く考えずに器具及び備品の楽器に該当するとして減価償却費を経費計上してしまったのでしょう。
金額が億単位なだけに会計・税務処理の際にもっと慎重になるべきでしたね。
同業者の失敗を教訓に明日は我が身と思い今後の業務をより慎重に行いたいと思います。
本当にこの処理でいいのか?
「減価償却資産になるだろう」ではなく、「減価償却資産に該当しないかもしれない」と考えなくてはなりませんね。
だろう運転は事故のもと、かもしれない運転を心がけたいと思います。