令和6年度税制改正で決まった定額減税、前回はサラリーマンの減税方法について確認しましたが今回はフリーランスの減税方法について確認しましょう。
定額減税とは
定額減税とは令和6年度税制改正で実施が決まった減税策です。
物価高を受けた家計支援策の一環といわれています。
政府は賃金の上昇が物価高に追いつくまでの「一時的な措置」と位置付けているため令和6年に限った措置となっています。
減税金額
1人当たり所得税3万円、住民税1万円が減税になります。
本人に加え配偶者や扶養親族も対象になります。
より正確に表現すると次の金額の合計額ということになります。
- 本人 所得税3万円、住民税1万円
- 同一生計配偶者又は扶養親族(いずれも日本の居住者に限る) 1人につき 所得税3万円、住民税1万円
同一生計配偶者とは
「同一生計配偶者」は、現行の所得税法の定義と同一になります。
居住者の配偶者でその居住者と生計を一にするもの(青色事業専従者等を除く。)のうち、合計所得金額が48万円以下である者です。
扶養親族とは
「扶養親族」も、現行の所得税法の定義と同一になります。
- 居住者の親族(配偶者は親族としてダブルではカウントしません)
- 里親に委託された児童
- 養護受託者に委託された老人
上記のうち、居住者と生計を一にするもの(青色事業専従者等を除く。)で合計所得金額が48万円以下である者です。
なお、他の人の扶養親族になっている場合はいずれか一人の扶養親族となります。
ダブル適用は無しということですね。
所得金額調整控除で認められているダブル適用とは考え方が異なりますのでご注意ください。
判定時期
同一生計配偶者・扶養親族に該当するかどうかの判定は、令和6年12月31日の現況(令和6年の中途で死亡・国外転出する場合は、死亡・国外転出時の現況)によります。
対象者
令和6年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下の方が所得税の減税の対象になります。
住民税は令和5年分の合計所得金額が1,805万円以下の方が対象になるため計算対象年が1年ズレていることに注意が必要です。
いわゆる高額所得者は対象外になります。
所得税の減税実施方法
令和6年分の予定納税額から控除
予定納税がある方は令和6年分の所得税に係る第1期分の予定納税額(7月)から本人分の所得税の定額減税額(3万円)が控除されます。
同一生計配偶者と扶養親族分については、予定納税額の減額申請の手続により控除の適用を受けることができます。
第1期分予定納税額から控除しきれない部分の金額は、第2期分予定納税額から控除されます。
なお、予定納税額の減額申請の手続期限について例年は7月15日までであったところ、今年は7月31日まで期限が延長されます。
納期についても第1期は例年7月1日から7月31日まででしたが、今年は7月1日から9月30日までに期間が延長されます。
令和6年分の確定申告での控除
予定納税が無い方や予定納税で控除しきれなかった方は確定申告で初めて控除することになります。
予定納税で控除された方も控除後の予定納税額をもとに確定申告でも再度定額減税額を計算することになります。(2回控除されるわけではありません)
令和6年分の確定申告の際に、いったん定額減税を適用しないで算出した所得税額から定額減税額を控除することで定額減税が適用されます。
予定納税の時点では一律に定額減税が計算されますが、確定申告時に合計所得金額が1,805万円超になった場合は定額減税が適用できないことになります。
考え方がややこしいので計算例を示しますね。(単位:万円)
確定申告時定額減税有 (所得1,905万円以下) |
確定申告時定額減税無 (所得1,905万円超) |
|
≪令和6年7月予定納税≫ | ||
本来の予定納税額 | 50 | 50 |
定額減税 | ▲3 | ▲3 |
予定納税額 | 47 | 47 |
≪令和7年3月確定申告≫ | ||
確定年間税額 | 100 | 100 |
定額減税 | ▲3 | |
予定納税 | ▲47 | ▲47 |
確定申告納税額 | 50 | 53 |
合計所得が1,905万円以下と超とで年間税額が同額になっているのは気にしないでください(所得控除の金額によってはそういうこともあり得ます)。
左の「確定申告時定額減税有」のケースでは定額減税が2回控除されているように見えますが確定申告時には定額減税控除後の予定納税額を控除しているのでそこで予定納税時に控除された定額減税額は精算(マイナスのマイナスでプラス)されていますね。
と、文章で表現してもややこしいですよね。
「確定申告時定額減税有」のケースが「確定申告時定額減税無」のケースより最終的な確定申告納税額で3万円少ないことをご確認いただければ問題無いと思います。
なお、サラリーマンや年金受給者としての立場もある方はそれぞれ給与や年金の受給時の源泉徴収で定額減税を受けていますので確定申告で最終的な定額減税額との精算を行うことになります。
またフリーランスとしての報酬の支払を受ける際の源泉徴収では、定額減税は実施されません。
住民税の減税実施方法
令和6年の普通徴収から控除
定額減税前の年税額をもとに算出した第1期分(令和6年6月分)の税額から定額減税額が控除されます。
第1期分から控除しきれない場合は、第2期分(令和6年8月分)以降の税額から、順次控除されます。
第3期分(令和6年10月分)、第4期分(令和7年1月分)まで繰り越すケースもありますね。
所得割が限度
控除額は所得割からしか控除されません。
例えば定額減税額が4万円で所得割3.5万円、均等割0.4万円、森林環境税0.1万円の場合、3.5万円が限度になり、均等割0.4万円、森林環境税0.1万円からは控除されません。
この場合、定額減税が無ければ、第1期分(令和6年6月分)、第2期分(令和6年8月分)、第3期分(令和6年10月分)、第4期分(令和7年1月分)はそれぞれ1万円の徴収になりますが、所得割3.5万円からの控除が優先され、第1期分から第3期分までが徴収ゼロになり第4期分で均等割0.4万円、森林環境税0.1万円が徴収されることになります。
なお、控除しきれなかった金額については給付金が支給されることになっています。
個人的な疑問点
フリーランスとして予定納税があり、かつサラリーマンとしての立場もあり、勤務先の会社に扶養控除等申告書を提出している人は、6月以降のサラリーマンとしての給与と7月のフリーランスとしての予定納税とで2重に定額減税が実施されることになるのでしょうか?
おそらく税務署も勤務先の会社もお互いの状況を把握することがむずかしいため6月と7月で2重減税になるものと思われます。
最終的には確定申告で精算されて定額減税の2重減税は解消されますがその分、確定申告での納税額が増えてしまいますね。
最後に
なお、本記事執筆時点では定額減税の実施が盛り込まれた令和6年度税制改正に係る「所得税法等の一部を改正する法律案」が閣議決定され、通常国会へ提出された状態です。
政府・与党は、令和6年3月末までの同法案の成立・公布を目指しています。
まず間違いなくこのまま実施されると思いますが100%確実ではない点だけご注意ください!