事業を行っていると少なからず発生するのが債権の貸倒です。
法人税法上、貸倒損失として計上が認められるためにはいくつかのパターンがあり、いずれかの要件を満たす必要があります。
外国法人に対する債権も日本の法人に対する債権と同様に要件に当てはめ、いずれかの要件に該当すれば貸倒損失が計上できることになります。
貸倒損失として処理できる場合
法人税法上、貸倒損失として処理できる場合は基本通達に取り扱いが明示されています。
法人税法基本通達9-6-1~9-6-3が貸倒れについてですが通達を多少分かりやすくまとめたものが国税庁のタックスアンサーに掲載されています。
今回は国税庁のタックスアンサーを引用しながら、法人税法基本通達9-6-1~9-6-3を外国法人に当てはめて貸倒損失として計上できるケースを考えてみたいと思います。
法人税法基本通達9-6-1
いわゆる法律上の貸倒というものです。
(1)については全て日本の法律に基づく債権の切り捨てです。
外国法人であればこれらの法律に基づいての債権の切り捨てはありません。
ちなみに日本の破産法もこの9-6-1を適用しての貸倒損失計上はできないものとされています。
(2)については現地で債権者集会、金融機関の協議が行われたことを確認できる書類があれば十分適用が可能なものと思います。
合理的な基準によって切り捨てられていることもしっかり確認する必要がありますね。
(3)については書面による債権放棄ですので外国法人であっても同様に債権放棄する旨をしっかりと文書で残して貸倒損失を計上することになります。
債務超過の状態が相当期間継続していることを証明できる資料(決算書など)の保管も忘れずにしておく必要があります。
法人税法基本通達9-6-2
いわゆる事実上の貸倒というものです。
日本の破産法はこちらの9-6-2で貸倒損失を計上することになりますので、外国の破産法もこちらの9-6-2を適用しての貸倒になるものと思われます。
アメリカの連邦倒産法(連邦破産法)など各国に破産・倒産関係の法律はありますので確認してみましょう。
9-6-1と9-6-2の違いは損金経理(会計上で貸倒損失を計上していること)の要件があるかないかぐらいですのであまり気にする必要はありません。
重要なのは「全額が回収できないことが明らか」であることを証明することです。
何かしらの書類でそれが確認できればよいのですが外国法人ともなると資料の入手や分析が思うようにいかないことも予想されるため、ややハードルが高く思われます。
日本の実務上は内容証明郵便を出して売掛金の請求を行い、受取人不在で返送されたものの封を切らずに保存しておくなどして回収不能を説明したりもしますが外国法人だとその方法も難しく思われます。
法人税法基本通達9-6-3
いわゆる形式上の貸倒というものです。
1円残しの貸倒として適用されている会社も多いと思います。
(1)は取引停止後1年以上経過している場合に貸倒が計上できるものです。
よくある注意点としては単発取引には適用できない点、売上取引に限られているので貸付金などには適用できない点があります。
あとは一応、債務者の資産状況、支払能力等が悪化していることも要件になっていますので単に疎遠になっただけでは適用できないことにも注意が必要です。
(2)は取引先の本社などがある現地(外国)に直接取立てに行く旅費などを考慮すると赤字(債権金額<旅費)になるのでやむを得ず貸倒にするケースです。
外国法人に対する債権はこのケースが適用しやすいかもしれませんね。
まとめ
外国法人に対する債権も適用すべき通達は日本の法人と同様です。
よく検討せずに貸倒損失を計上して税務調査で否認されることの無いように、また逆に貸倒損失が計上できないものと思い込み売掛金を残してその分の税金を多く払いすぎることの無いように、貸倒損失の計上を慎重に検討しましょう!