「事業継続力強化計画」の認定制度と、それに伴い中小企業防災・減災投資促進税制が始まっています。
制度の趣旨
近年、大規模な自然災害が全国各地で頻発しています。
このような自然災害は、直接被害にあわれた事業者の方々だけでなく、その事業者に雇用されている従業員の方々、さらには取引先を含めた日本のサプライチェーン全体にも大きな影響を及ぼすおそれがあります。
このため、中小企業の自然災害に対する事前対策(防災・減災対策)の取組強化の観点から、中小企業等経営強化法の改正法(中小企業強靱化法)が令和元年5月29日に成立、7月16日に施行されました。
「事業継続力強化計画」の認定制度とは
中小企業強靱化法に基づき防災・減災に取り組む中小企業は「事業継続力強化計画」を策定することになります。
「事業継続力強化計画」の認定制度とは中小企業が策定した防災・減災の事前対策に関する計画を経済産業大臣が認定する制度です。
認定を受けた中小企業は、中小企業防災・減災投資促進税制や金融支援、補助金の加点などの支援策が受けられます。
「事業継続力強化計画」の記載項目としては以下のものが例として挙げられています。
(中小企業庁資料より引用)
対策の取り組み事例として中小企業庁ホームページには以下のようなものが記載されています。
事業継続力強化計画に係る認定申請書の様式は中小企業庁のホームページに公開されていますが、A4で6ページほどで経営力向上計画の認定申請書に似ている感じです。
事業継続力強化計画では数値目標を記載する必要がない分、経営力向上計画より作りやすいかもしれないですね。
おそらく経営力向上計画と同様、形式的に必要な項目が記載されていれば内容の審査はほとんどなく、提出すれば認定が受けられるものと思われます。
中小企業防災・減災投資促進税制について
さて、肝心の中小企業防災・減災投資促進税制については以下のような内容になっています。
特別償却が適用可能
対象設備について特別償却が適用可能になります。
特別償却限度額は取得価額×20%です。
税額控除はなし
これが残念ですね。
税額控除はなしです。
対象設備
対象となる設備は、次の表のうち、事業継続力強化計画の認定申請書に記載し、経済産業大臣の認定を受けたものです。
なお、以下の①又は②に該当する設備は対象外となりますのでご注意ください。
① 消防法(昭和23年法律第186号)及び建築基準法(昭和25年法律第201号)に基づき設置が義務づけられている設備
② 中古品、所有権移転外リースによる貸付資産
適用期間
令和元年7月16日から令和3年3月31日までとなっております。
注意点
事業継続力強化計画について経済産業大臣の認定を受けた後に、その事業継続力強化計画に記載された設備を取得する必要があります。
取得した後に計画を出してもダメですね。
また、税務申告の際は、対象設備の償却限度額の計算明細書を添付する必要がありますのでお忘れのないように。
なお、認定通知書及び認定を受けた計画の写しについても、税務調査等の際に必要となりますので、大切に保管しておいてください。
税制以外の支援措置
金融支援
日本政策金融公庫による低利融資があり、設備資金については基準利率から0.9%引下げになります。(運転資金については基準利率)
また、事業継続力強化計画の実行にあたり、民間金融機関から融資を受ける際、信用保証協会による信用保証のうち、普通保険等とは別枠での追加保証や保証枠の拡大が受けられます。
予算支援
事業継続力強化計画の認定を受けた事業者は、ものづくり補助金等の一部の補助金において審査の際に、加点を受けられます。
まとめ
正直、税制優遇措置目的で事業継続力強化計画を策定するには手間がかかる反面、受けられる税メリットが少なく思われます。
即時償却ならいいのですが20%の特別償却だと節税効果も少ないです。
また、税額控除がとれればよかったのですが今回の制度では税額控除はなしです。
ただ、この制度をきっかけに自社の防災・減殺対策について社内で検討するきっかけになるのは良いことではないかと思います。
ご興味のある方は検討してみてください!