令和3年度税制改正において、所得拡大促進税制の大企業版である「賃上げ・生産性向上のための税制」は、
そして中小企業版の所得拡大促進税制も同時に見直しが行われます。
なお、いずれも令和3年4月1日以降に開始する事業年度(3月決算法人は令和4年4月期)からの適用になります。
人材確保等促進税制
適用要件
通常要件
新規雇用者給与等支給額が、前期比で2%以上増えていること
新規雇用者給与等支給額とは、国内の事業所において新たに雇用した雇用保険法の一般被保険者に対してその雇用した日から1年以内に支給する給与等の支給額をいいます。
なお対象者から、支配関係がある法人から異動した人と海外から異動した人は除かれますのでグループ間で人を動かしたり海外から呼び戻したりして要件を満たそうとしてもダメということですね。
上乗せ要件
教育訓練費が、前期比で20%以上増えていること
教育訓練費には法人が自社で行う場合の講師謝金等、施設使用料等、外部に委託して行う場合の研修委託費等、外部の研修に参加させる場合の参加費などが該当します。
税額控除
通常要件
控除対象新規雇用者給与等支給額の15%を法人税額等から税額控除
控除対象新規雇用者給与等支給額とは、国内の事業所において新たに雇用した人に対してその雇用した日から1年以内に支給する給与等の支給額をいいます。
こちらは適用要件のように雇用保険の一般被保険者に限られていないのでアルバイト・パートなどの非正規雇用の方も含まれますね。
ただし、雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額が上限になります。(雇用者給与等支給額が前期を上回らなければ控除額ゼロということです)
だいぶややこしくなってきましたが雇用者給与等支給額は新規の文字もないので国内で雇用している従業員全員の給与です。もちろん非正規の方も含みます。役員報酬と役員親族の給与を除くのは注意点ですね。
比較雇用者給与等支給額は前期の国内で雇用している従業員全員の給与ですね。
海外勤務の人がいない会社の場合、ざっくりいうと会計上の当期の給与・賞与金額から前期の給与・賞与金額を引いた金額(給与・賞与金額の前期比増加額)が上限という意味ですね。
ただ、対象者から、支配関係がある法人から異動した人と海外から異動した人は除かれますのでグループ間で人を動かしたり海外から呼び戻したりして控除額を増やそうとしてもダメということです。
この部分の調整計算がやっかいかもしれませんね。
上乗せ要件
控除対象新規雇用者給与等支給額の20%を法人税額等から税額控除
通常より5%上乗せですね。
控除上限
税額控除額は法人税額等の20%を上限とします。
所得拡大促進税制
適用要件
こちらは前提として中小企業(資本金1億円以下等)であることが要件になります。
通常要件
雇用者給与等支給額が前期比で1.5%以上増加していること
ということで新規雇用者の要件は無しです。
上乗せ要件
雇用者給与等支給額が前期比で2.5%以上増加していること
かつ、以下の要件のどちらかを満たすこと
- 教育訓練費が、前期比で10%以上増えていること
- 適用年度終了の日までに、中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受け、その計画に従って、経営力向上が確実に行われたものとして証明がされたこ
上乗せの判定にも新規雇用者の要件は無しですね。
中小企業には無理に新規採用を求めないということでしょう。
税額控除
通常要件
雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額の15%を法人税額等から税額控除
上乗せ要件
雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額の25%を法人税額等から税額控除
通常より10%上乗せですね。
控除上限
税額控除額は法人税額等の20%を上限とします。
まとめ
今までは継続雇用者の考え方で2年間(2期間)以上在籍している正社員の給与を引き上げる必要があり新規採用しても税制上のメリットはありませんでしたが、これからは新規採用した人に支給する給与の増加が要件になりますので積極的な採用増が求められますね。
継続雇用者の集計は結構大変だったので集計作業が楽になるというメリットもありますね。
そして大企業向けの要件で設備投資要件が無くなったのも大きい変化です。
設備投資要件は結構厳しい要件だったのでそこで要件を満たさない企業が多かったですからね。
また、中小企業はそれまでと同様、中小企業対象の所得拡大促進税制の要件を満たさない場合も大企業向け人材確保等促進税制の要件を満たせば税額控除が受けられますのでダブルチェックを忘れないようにしましょう。