6月19日に国税庁ホームページで「平成29年度分会社標本調査結果」が掲載されました。
会社標本調査とは
国税庁が毎年公表している調査結果です。
資本金別や業種別に会社の決算数字を調査しており日本の会社の実態を明らかにするとともに税収の見積もりや税制改正のための情報としても利用されています。
税務署に提出された法人税の確定申告書等の数字に基づいた調査であり中小企業から大企業まで幅広く調査が出来ておりかつ数字の信頼性も高いものと思われます。
標本調査ということで資本金別、業種別に一定の方法で標本会社を抽出し、その標本会社の基礎データを基に全体の数字を推計しているものになります。
ちなみに標本法人割合は以下の通りになっています。
資本金10億円超の会社と連結法人は全て標本に入っていますね。
調査結果の概要
調査結果の概要のうち、気になったものをいくつか見ていきたいと思います。
法人数と連結法人数
法人数は270万6,627社で、このうちの連結親法人は1,726社、連結子法人は1万2,671社となっています。
平成14年から始まった連結納税制度ですが制度の使いづらさから利用が進まない状況です。
法人数のうちの1%にも満たないですね。
今、税制改正により連結納税制度を利用しやすくする検討がされていますが是非利用しやすいように改正してほしいですね。
それぞれの企業グループの状況に応じた公平な課税が実現されることが望まれますのでね。
資本金1億円以下の法人は増えている
税理士として独立する(した)という話をすると「会社は減っているから税理士もこれからは厳しいでしょ」ということをいう人が結構いますが法人数は年々増えていますね。
内訳としては資本金1億円以下の法人が増えて、資本金1億円超の法人は減っています。
さらに内訳をみると資本金1,000万円以下の法人が前年比34,796社増えており、創業・起業したばかりの法人を応援したい私にとっては朗報かなと思いました。
資本金1億円以下の法人の割合は99.2%になっており日本の会社のほとんどは中小企業だということが改めて分かりますね。
欠損法人割合は減っている
欠損法人(≒赤字法人)の割合は平成21・22年度の72.8%をピークに減っています。
今回の調査では62.6%です。
アベノミクス効果でしょうか。
これらの数字は税務上の欠損法人であり、会計上の赤字法人とは完全に一致しないため何とも言えませんが数字だけ見れば景気が上向いていると判断できます。
ちなみに業種別でみると出版印刷業が74.8%で最も高く、次いで繊維工業74.4%、飲食旅館業73.3%となっています。
出版印刷、厳しいんですね。
利益計上法人の所得率は5.5%
所得率であり利益率ではないですが所得率≒利益率と考えて参考にしたいですね。
ここ数年上昇傾向にありますが、直近10年で最も低かったのが平成24年度の4.0%なので大きくぶれてはいないです。
業種別の所得率では不動産業が11.3%で最も高く、次いで鉱業11.3%、金融保険業9.5%となっています。
自社の利益率目標の参考になるかもしれませんね。
交際費等の金額
他社がどれだけ交際費を使っているか気になる社長も多く、よく質問されることがあります。
現実は会社ごとにそれぞれで、使う会社はものすごく使いますが使わない会社は全く使いません。
売上との相関関係もあまりないような気がします。
交際費等の支出額全体は平成23年度を底にして年々増加しています。
平成25年度税制改正で中小法人の交際費損金算入枠が増えたこと、平成26年度税制改正で大法人の飲食交際が50%損金算入可能になったことによるものと思われます。
また、こちらにもアベノミクス効果があるでしょうか。
営業収入10万円当たりの交際費は251円です。
割合にすると0.25%、そんなもんでしょうか。
資本金別でみてみると資本金1,000万円以下の法人の割合は0.67%、資本金10億円超の法人は0.10%ということで規模が大きくなればなるほど割合が下がっていきます。
これは交際費を使える権限のある人がいる割合と考えれば納得ですね。
交際費が使えるのは幹部社員で幹部社員1人が使う交際費は中小法人でも大法人でも大差ないと考えると従業員数に占める幹部社員数の高い中小法人は自然と売上に占める交際費の割合も高くなると思います。(なんか分かりづらくてすいません…)
業種別でみると建設業が0.66%で最も高く、次いで不動産業0.58%、サービス業0.46%の順になっています。
一方、鉱業・金融保険業・卸売業が0.1%台で低くなっています。
分かるような気がしますね。
まとめ
自社の経営戦略を練るうえで重要な情報が隠れいているかもしれませんので是非一度目を通してみてください。