消費税

軽減税率に対応できなくても(しばらくは)大丈夫!中小企業には特例計算があります!

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軽減税率が実施される令和元年10月1日以降の消費税計算は、原則として、売上と仕入を税率ごとに区分して行うこととなります。

ただ、売上と仕入を税率ごとに区分することが困難な中小事業者(注)については計算の特例があります。

(注) 中小事業者とは、基準期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者をいいます。

売上の特例

飲食料品等を扱う卸売業・小売業などの中小事業者は、原則的にはその売上の一つ一つについて消費税が8%なのか10%なのかを区分して経理する必要があります。

しかし中小事業者においては売上の一つ一つについて正確に経理することが困難な事情もあることが考慮され、特例計算が出来ることになっています。

特例計算の方法は3パターンあります。

小売等軽減仕入割合の特例(卸売業・小売業者限定)

課税仕入れを税率ごとに管理できる卸売業・小売業者は軽減仕入割合を課税売上に掛けて軽減税率8%の売上を計算することが出来ます。

軽減仕入割合は「軽減税率対象の課税仕入れ÷その事業(卸売業・小売業)全体の課税仕入れ」で計算します。

結果、「その事業(卸売業・小売業)全体の課税売上げ×軽減仕入割合=軽減税率8%の売上」とすることが出来ます。

なお、仕入税額について簡易課税制度の適用を受けている場合はこの特例は適用できません。

(国税庁の手引きより引用)

(注2は軽減仕入割合も軽減売上割合も計算が困難な場合の注書きです)

軽減売上割合の特例(業種関係なし)

まず、通常の連続する10営業日の課税売上げのうちに同じ期間で軽減税率8%の売上がどれだけ含まれているかの割合を計算します。

その割合を軽減売上割合として年間の税額計算の際に年間の課税売上げに掛けて軽減税率8%の売上を計算することが出来ます。

「通常の連続する10営業日」とはこの特例の適用を受けようとする期間内の10営業日であれば、いつかは問わないことになっています。

年間通して10%と8%を区分して経理することは無理な事業者も10営業日ぐらいであれば頑張れるでしょう、という特例ですね。

(国税庁の手引きより引用)

(注3は軽減仕入割合も軽減売上割合も計算が困難な場合の注書きです)

軽減仕入割合も軽減売上割合も計算が困難な場合

軽減仕入割合も軽減売上割合も計算が困難な場合、軽減売上割合を50%とすることも可能です。

ただし、この特例は主として軽減対象資産の譲渡等を行う事業者に限定された特例です。

主として軽減対象資産の譲渡等を行う事業者とは適用対象期間中の課税売上げのうちに軽減税率の対象となる課税売上げの占める割合がおおむね50%以上である事業者とされています。

適用対象期間

これらの計算は経過措置として認められますので適用対象期間の制限があります。

適用対象期間は令和元年10月1日から令和5年9月30日までです。

令和元年10月1日と令和5年9月30日をまたぐ課税期間においては同じ課税期間内に特例での計算期間と原則での計算期間の2パターンが存在することになりますので注意が必要です。

フロチャート

(国税庁の手引きより引用)

仕入の特例

飲食料品等を扱う卸売業・小売業などの中小事業者は、原則的にはその仕入の一つ一つについて消費税が8%なのか10%なのかを区分して経理する必要があります。

また、販売商品で飲食料品などを扱っておらず売上に軽減税率が発生しない場合も経費では飲食料品を購入し軽減税率が発生する可能性があります。

中小事業者においては仕入・経費の一つ一つについて正確に経理することが困難な事情もあることが考慮され、特例計算が出来ることになっています。

仕入の特例計算の方法は2パターンあります。

小売等軽減売上割合の特例(卸売業・小売業者限定)

課税売上げを税率ごとに管理できる卸売業・小売業者は軽減売上割合を課税仕入れに掛けて軽減税率8%の仕入を計算することが出来ます。

小売等軽減売上割合は「軽減税率対象の課税売上げ÷その事業(卸売業・小売業)全体の課税売上げ」で計算します。

結果、「その事業(卸売業・小売業)全体の課税仕入れ×小売等軽減売上割合=軽減税率8%の仕入」とすることが出来ます。

課税売上げについて軽減売上割合の特例を適用した場合はその割合が小売等軽減売上割合になりますので。

軽減仕入割合も軽減売上割合も計算が困難な場合で軽減売上割合を50%としたときは、小売等軽減売上割合も50%になり、結果、売上も仕入も50%が軽減税率の対象という計算になります。

(国税庁の手引きより引用)

(注4は軽減売上割合の特例を適用した場合はその割合を適用する旨の注書きです)

また、この計算は経過措置として認められますので適用対象期間の制限があります。

適用対象期間は令和元年10月1日から令和5年9月30日までです。

令和元年10月1日と令和5年9月30日をまたぐ課税期間においては同じ課税期間内に特例での計算期間と原則での計算期間の2パターンが存在することになりますので注意が必要です。

簡易課税制度の届出の特例

仕入税額についての簡易課税制度は軽減税率制度導入前からあったものと同じです。

課税売上げにみなし仕入れ率を掛けて仕入税額を計算するものですので仕入について軽減税率の対象であるか否かを区分する必要がありません。

今回の軽減税率制度導入にあたり設けられたのは「届出」の特例です。

本来、簡易課税制度は適用しようとする課税期間の前課税期間末(前期末)までに届け出をしないといけませんが今回の特例により簡易課税制度を適用しようとする課税期間中に届け出をすれば間に合うことになりました。

なお、簡易課税制度を適用する場合、課税売上げについては軽減税率を区分して経理する必要がありますのでご注意ください。

また、特例の対象期間は令和元年10月1日から令和2年9月30日までの日の属する課税期間です。

「属する」となっていますので9月決算法人で令和元年10月1日から令和2年9月30日が課税期間になっているケース以外の法人は2事業年度(課税期間)が対象になりますね。

3月決算法人であれば令和2年3月期(令和元年10月1日から令和2年3月31日を含む)も令和3年3月期(令和2年4月1日から令和2年9月30日を含む)も対象になります。

さらに注意点ですが簡易課税の取りやめ(不適用)の届出には特例がありません。

簡易課税制度を選択している場合は小売等軽減仕入割合の特例が適用できませんので簡易課税の取りやめの届出のタイミング(やめようとする課税期間の前期末まで)にご注意ください。

フローチャート

(国税庁の手引きより引用)

売上の特例と仕入の特例の併用

売上も仕入も軽減税率8%を区分して経理することが困難な場合は、ぞれぞれの特例を併用することが出来ます。

併用できるパターンはいくつかありますのでご紹介いたします。

卸売業・小売業を含む全ての業種で可能な併用パターン

卸売業・小売業者のみ選択可能な併用パターン

フローチャート

(国税庁の手引きより引用)

まとめと注意点

基準期間の課税売上高が5,000万円以下の中小事業者は特例計算による計算を検討しましょう。

今までの簡易課税制度と同様、実務運用上は軽減税率を区分して経理することが出来る事業者でも特例計算の方が有利(納税額が少なくなる)であれば特例計算による申告納税も認められるものと思います。

申告の際は各パターンを比較検討し最も納税額が少なる方法を選ぶ必要があるかもしれませんね。

ただ、今回の特例は原則的に計算することが困難な事情がある場合と明言されており、「困難の度合いを問いません」ということが国税からの資料にも記載されておりますが、あまりにあからさまに(綿密に)シミュレーションをして有利な方を選んでいる場合などは「計算が困難でない」と税務調査時に指摘される可能性もありますので注意が必要です。

その他、「通常の連続する10営業日」や「軽減仕入割合も軽減売上割合も計算が困難な場合」「主として軽減対象資産の譲渡等を行う事業者」なども線引きがあいまいで、税務調査時に問題になる可能性を含んでいますね。

また、簡易課税制度以外は経過措置ということで令和5年9月30日までしか適用することが出来ませんので、あと4年で原則的な計算が出来るように準備する必要もあります。

令和5年10月1日からは適格請求書等保存方式も始まりますので、そのタイミングが日本の消費税計算において重要なポイントになりそうですね。

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