ロカベンをご存知でしょうか?
ほか弁ではありません。ドカベンでもありません。ましてやドカポンでは絶対ありません。
ロカベンとは経済産業省が推進しているローカルベンチマークのことです。
ロカベンとは
政府が「日本再興戦略改訂2015」において「ローカル・アベノミクス」を推進する施策として検討を始め、平成28年3月に経営革新等支援機関などが企業と対話を深め、さらに生産性向上に努める企業に対し成長資金を供給するよう促していくことを目的に策定されたものです。
もう少しわかりやすく具体的にいうとロカベンとは「企業の健康診断ツール」です。
企業の経営状態の把握、「健康診断」を行うツールとして企業の経営者や金融機関・認定支援機関等が企業の状態を把握し双方が同じ目線で対話を行うためのもので、事業性評価の「入口」として活用されることが期待されています。
ローカルベンチマークツールに「財務情報」と「非財務情報」に関する各データを入力することにより、企業の経営状態を把握することで経営状態の変化に早めに気付き、早期の支援につなげていくものです。
6つの指標
ローカルベンチマークの財務情報には6つの指標があります。
①売上高増加率(売上持続性)
算出式:(最新期売上高/前期売上高)-1
単位:%
②営業利益率(収益性)
算出式:営業利益/最新期売上高
単位:%
③労働生産性(生産性)
算出式:営業利益/従業員数
単位:千円
④EBITDA有利子負債倍率(健全性)
算出式:(借入金-現金・預金)/(営業利益+減価償却費)
単位:倍
⑤営業運転資本回転期間(効率性)
算出式:{売上債権(売掛金+受取手形)+棚卸資産-買入債務(買掛金+支払手形)}/(売上高/12)
単位:か月
⑥自己資本比率(安全性)
算出式:純資産/負債・純資産合計
単位:%
以上が6つの指標です。
ローカルベンチマークツールに自社の情報を入力すると以下のようなかたちで分析結果が表示されます。
6つの指標について3期比較ができ、それぞれの指標の合計点数で総合評価がA~Dで表されます。
点数付与の考え方は以下の通りです。
(経済産業省HPより引用)
ローカルベンチマークツールに入力した自社の財務情報と業種基準値との比較で点数が決まります。
ちなみにロカベンにおける財務指標作成時の分析対象企業については以下のようになっています。
(経済産業省HPより引用)
同業他社との比較で自社の財務状況がいいのか悪いのかが点数化されて分かるという仕組みになっています。
この点数を基にこのままの経営状態でよいのか改善が必要なのかを考えるきっかけになればよいということですね。
ただ、業種は小分類まで細分化されいますが実際に分類を見てみるとかなり大きく括られている感じがします。
特に「その他のサービス業」に分類されてしまうと自動車整備業、郵便局、老人ホーム、大学、美容業などなど一括りにすことに疑問を抱くような事業が満載です。
製造業、飲食業、建設業などはそれぞれの括りで指標が大きくぶれないと思われますが「その他のサービス業」に分類された場合は点数を鵜呑みにせずじっくり分析する必要がありますね。
4つの視点
ローカルベンチマークの非財務情報には以下の4つの視点があります。
①経営者への着目
具体的には経営理念・ビジョン、経営哲学・考え・方針等を認定支援機関等が経営者との対話から聞き出し、まとめます。
さらに成長志向なのか現状維持なのかといった経営意欲の確認も必要になります。
そして、後継者の有無、後継者の育成状況、承継のタイミングなども確認します。
②関係者への着目
市場動向、競合他社との比較などSWOT分析のOとTのようなものを行います。
取引先(顧客)との関係についてもリピート率や新規開拓率を分析し、顧客からのフィードバックも求めましょう。
従業員と会社との関係も定着率・勤続年数・平均給与などを分析します。
そして取引金融機関の数や推移、メインバンクとの関係も確認します。
③事業への着目
企業の沿革を再確認し、ターニングポイントを把握します。
自社の強み・弱みも分析しSWOT分析のSとWを確認します。
また、生産性向上に向けたIT投資を行っているかを確認すべきとされているところはロカベンの特徴的なところかと思います。
④内部管理体制への着目
まず、組織体制、品質管理・情報管理体制を確認します。
そして、事業計画の有無、従業員との共有状況、社内会議の実施状況を確認します。
さらに人材育成の仕組みや取り組み状況を確認します。
また、研究開発の体制や知的財産権の保有・活用状況まで確認・検討するところはロカベンの特徴的なところかと思います。
以上の4つの視点を認定支援機関等が経営者や関係者などとの対話から確認分析し現状を認識したうえで目標とすべきところとのギャップ・課題を見つけ、関係者全員で一緒に対応策を考える仕組みになっています。
まとめ
経営者の皆様はご自身の健康診断だけでなく会社の健康診断も定期的に実施されることをお勧めします。
経済産業省の勧めるロカベンを活用してもよいでしょうし、ロカベンを活用せずとも顧問税理士にご相談いただければそれぞれの分析で的確なアドバイスをもらえることと思います。
気づいたときには会社が病気になっていて手遅れの状態、ということにならないように会社の健康状態にも注意しましょう!