税理士業務

倒産防止共済の注意点まとめ

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最近は経営セーフティ共済という愛称でも知られる倒産防止共済です。

本来は取引先が倒産した際に、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度です。

もしものときには無担保・無保証人で掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで借入れでき連鎖倒産の防止が期待されています。

掛金は損金または必要経費に算入できるため節税効果もあります。

多くの中小企業ではこの節税効果を受けることがメインになっていますね。

今回は倒産防止共済を活用する上での注意点をまとめてみたいと思います。

なお、基本的な制度の内容は省略しますので倒産防止共済の基本的な内容から知りたい方は中小機構のホームページをご確認ください。

前納の期間が1年以内であれば支払日の損金でOK

倒産防止共済の掛け金の損金算入時期は掛金を支払った日を含む事業年度になります。

将来の掛金を前納した場合も期中に支払いが完了していれば損金算入が可能ということですね。

ただし、前納の場合は前納の期間が1年以内であることが損金算入の条件になっていますので注意しましょう。

加入と同時に1年分の前納をする場合、期末直前でもOK

初年度(当初申込時)は取引のある銀行窓口で加入申込をしてその場で1年分を前納(振込)することが可能です。

極論、決算日(3月決算であれば3月31日)に手続きすることも可能であると思われます。

ただし本当のギリギリですと当日扱いの振込が可能な時間が過ぎてしまっていたり、書類不備があって出直しになると間に合わなくなってしまいますので1週間程度は余裕をもって銀行に行きましょう。

なお、銀行側からしても頻繁にある手続きではないため事前に電話して「倒産防止共済加入の手続きをしたい」旨を伝えておくと当日の手続きがスムーズになると思います。

何を隠そう私は銀行員の立場で急に申込手続き希望のお客様が来店され慌てふためいたことがあります!

既に加入している場合の前納は期末1か月前には手続きを

掛金前納申出書が5日までに中小機構に届けば期末直前の引落日(27日)(休業日の場合は翌営業日)に前納掛金の引落が間に合うとされています。

登録取扱機関の団体または金融機関の窓口に提出して、そこから中小機構に送られることを考慮すると期末の1か月前には手続きを済ませておきたいところです。

なお、登録団体になっている税理士協同組合のホームページにも「払込み希望月の前月末までに本組合必着でご送付ください」と記載されています。

ネット専業銀行では加入できない

より正確には口座振替金融機関にネット専業銀行が指定できないということになります。

加入手続きは、中小機構と業務委託契約を結んでいる団体(委託団体)または金融機関の窓口で行うことになります。

ネット専業銀行にしか口座が無い場合、委託団体を通じて申込すれば加入ができる?と思われるかもしれませんが委託団体を通じて申込した場合も掛金の引落口座について金融融機関窓口にて口座確認印を取得しなければなりません。

この口座確認印の取得が現在のネット専業銀行では行えないため結果的にネット専業銀行にしか口座をお持ちでない場合は倒産防止共済に加入できないことになってしまいます。

直前期が赤字であるなど法人税の納税が無い場合は納税証明書は不要

加入手続きの必要書類として機構のホームページには法人税を納付したことを証する「納税証明書(その1)」(確定申告書に記載された中間、確定の税額を納付したことを証する領収書で代えることもできます。)との記載がされています。

所得税の場合も所得税を納付したことを証する「納税証明書(その1)」(確定申告書に記載された予定、確定の税額を納付したことを証する領収書で代えることもできます)と記載されていますね。

これらと同時に直近の法人税または所得税の確定申告書を添付しますので納税証明書は直前期のものということになりますが直前期が赤字であるなど法人税・所得税の納税が無い場合はどうしたらよいでしょうか。

この場合は納税証明書は発行されませんので不要ということになります。

なお納税証明書(その3) を提出して未納の税額がないことの証明をする必要があるのでは?と思われる方がいらっしゃるかもしれませんがその必要もないとのことです。

40か月未満の任意解約は元本割れします

任意解約をする場合、掛金納付年数が40か月未満で任意解約をすると解約手当金は納付掛金を下回りますので注意が必要です。

解約手当金の支給率は以下の通りです。

掛金納付年数 1.任意解約 2.機構解約 3.みなし解約
1〜11ヶ月 0% 0% 0%
12〜23ヶ月 80% 75% 85%
24〜29ヶ月 85% 80% 90%
30〜35ヶ月 90% 85% 95%
36〜39ヶ月 95% 90% 100%
40ヶ月以上 100% 95% 100%
  1. 任意解約
    共済契約者が任意でいつでもきる解約
  2. みなし解約
    個人事業主の死亡や法人(会社など)の解散・分割の際に、その時点で解約されたものとみなす場合
  3. 機構解約
    12か月分以上の掛金の滞納や共済金の貸付けなどに不正行為があった場合に中小機構が行う解約

ちなみに掛金納付年数、となっている点も注意が必要です。

掛金の納付をストップする掛止めをしている場合は年数のカウントが進みません。

掛金の支払が厳しくなっ場合でも掛金を最低の5千円まで減額して40か月までは支払し続けましょう。

任意解約の解約手当金が入金になるには2週間かかる

任意解約の解約手当金が入金になるまでには機構に書類が届いてから10日~2週間が目安になります。

なお、機構のホームページでは任意解約の手続きは必要書類を「登録取扱機関に提出してください。」という表現になっていますが直接機構宛てに郵送しても問題ないようです。

登録取扱機関を経由するとその分時間がかかってしまいますのでお急ぎの場合は直接機構宛てに郵送したほうがいいかもしれませんね。

任意解約後の再契約はできる

これは注意点ではありませんが知っておいた方がいい情報としてお知らせします。

解約手当金が入金になった後はすぐであっても再契約できるようです。

資金繰りが厳しい、利益を確保する必要がある、などの理由で解約した後、翌期などに業況が回復して節税が必要になったらまた再契約して掛金を支払うことができます。

掛止めは掛金総額が掛金月額の40倍に達している場合に可能

掛金の支払が厳しくなった場合、任意解約はせずに掛止めをすることが可能です。

ただ、上記の通り、掛金納付年数40か月未満の任意解約は元本割れしてしまうためなんとか40か月には到達したいですね。

この場合、先ほども記載した通り掛金を最低の5千円にすることがお勧めですね。

そして掛止めは掛金総額が掛金月額の40倍に達している場合に可能になります。

掛金を最低の5千円にすると、毎月の支払が楽になることに加え、「掛金総額が掛金月額の40倍」の判定についても減額後の掛金で判定できるため、掛金総額が5千円×40=20万円で掛け止めが可能になります。

税務申告時は明細書の添付が必要

最近はだいぶこの情報が浸透してきた印象がありますが、一時期はプロ(税理士)でも知らない人がちらほらいる状況でした。

所得税の申告時は『特定の基金に対する負担金等の必要経費算入に関する明細書』を、法人税の申告時は別表10(7)『特定の基金に対する負担金等の損金算入に関する明細書』を添付しましょう。

これらの明細書の添付が無いと損金・必要経費に算入できないことになってしまいます。

まとめ

中小企業の節税策として定着している倒産防止共済ですが上記のような注意点がありますので事前にご確認いただければ幸いです。

なお、上記は本日(2023年9月24日)時点の情報であることをご了承ください。

さらに中小機構のホームページなどに記載されていない、電話で確認した情報なども含まれますので現時点でも取り扱いが異なる可能性があるかもしれません。

実行される場合は念のため事前に中小機構に電話で確認されることをお勧めいたします。

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