税理士業務

年末調整の電子化について

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現在、在宅勤務を進めている経理、人事の方が多くいらっしゃると思います。

新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない中ではありますが、年末の一大業務である年末調整は在宅では難しいと考えている方が多いのではないでしょうか。

そこで検討したいのが年末調整業務の電子化です。

平成30年度税制改正により、今年の年末(令和2年分)の年末調整から、生命保険料控除、地震保険料控除及び住宅借入金等特別控除に係る控除証明書等が電子データで提供できるようになるなど、年末調整の電子化が可能になります。

今回は、年末調整の電子化についてお話したいと思います。

電子化前の今までの年末調整手続き

今までの年末調整の流れをおさらいしましょう。

  1. 従業員が、保険会社、金融機関、税務署等から控除証明書等を書面(ハガキ等)で受領します
  2. 従業員が、保険料控除申告書や住宅ローン控除申告書に、1で受領した書面(ハガキ等)に記載された内容を転記し、控除額を自分で計算して記入します
  3. 従業員が保険料控除申告書及び住宅ローン控除申告書などに加え、扶養控除等申告書などの年末調整の際に作成する各種申告書を作成し、控除証明書等とともに勤務先に提出します
  4. 勤務先は提出された年末調整申告書に記載された控除額と控除証明書等のチェックを行った上で、年税額を計算します

証明書、申告書は全て紙ですので自宅に持って帰って作業するのは書類の量やセキュリティの観点から難しいことが予想されますね。

(国税庁パンフレットより引用)

電子化になるとどうなるか

年末調整手続が電子化された場合は、次のような流れとなります。

  1. 従業員が、保険会社等から控除証明書等を電子データで受領
  2. 従業員が、年調ソフト(令和2年10月公開予定)に、住所・氏名等の基礎項目を入力し、1で受領した電子データをインポート(自動入力、控除額の自動計算)して年末調整申告書の電子データを作成
  3. 従業員が、2の年末調整申告書データ及び1の控除証明書等データを勤務先に提供
  4. 勤務先が、3で提供された電子データを給与システム等にインポートして年税額を計算

(国税庁パンフレットより引用)

電子化のメリット

勤務先のメリット

控除証明書等のチェックが不要

従業員が保険料控除申告書の作成の際に控除証明書等データを利用すれば、申告書と控除証明書等(書面)の突合作業が不要になりますね。

保険料控除や配偶者(特別)控除の控除額計算の検算が不要

保険料控除計算はデータ取込なので完全にチェック不要です。

そもそも計算が修正できない(改ざんできない)仕様になるようです。

扶養関係は従業員の手入力になると思うのである程度のチェックは必要でしょう。

年末調整関係書類の保管コストの削減

従業員から提供されたデータを原本として保管するため、書類の保管が不要となります。

これはでかいですね。

従業員数が多い会社は書類がかさばってしょうがなかったですよね。

従業員からの問合せが減少

国税庁ホームページにはこのメリットが記載されていますがどうでしょうか。

年調ソフトの入力支援機能や、今後設置予定の「年末調整電子化ヘルプデスク(仮称)」を利用することにより、従業員から給与担当者への問合せが減少することが見込まれます。

とのことですが、結局給与担当者に問い合わせが行くような気がします。

従業員のメリット

控除額等の記入・手計算が不要

これまで従業員が手計算していた配偶者(特別)控除や生命保険料控除の控除額について、年調ソフトに必要な項目を入力又は控除証明書等データを取り込むことにより、自動計算することができます。

 控除証明書等データを紛失しても再交付依頼が不要

書面の控除証明書等はだいたいハガキで届くので間違って捨ててしまっている人も多かったですよね。

紛失した場合は、これまでは保険会社等に再発行を依頼する必要があり、再発行までは1か月ぐらい時間がかかるケースもありました。

データ取得の場合は誤ってデータを消去してしまったとしても、迅速に再取得することができるようです。

勤務先からの問合せが減少

国税庁ホームページにはこのメリットが記載されていますがこれもどうでしょうか。

年調ソフトの入力支援機能を利用することにより誤りのない控除申告書が作成できますので、控除申告書の提出後、勤務先からの控除申告書の内容についての問合せが減少することが見込まれます。

今までも間違った申告書でも給与担当者がその従業員に問合せせずに勝手に直しているような気がしますが。

控除証明書見れば分かりますからね。

電子化するまでの流れ

勤務先

電子化の実施方法の検討

どのソフトウェアを使用するか、電子化後の年末調整手続の事務手順をどうするかなどを検討します。

従業員への周知

年末調整の電子化にあたり法令上は事前に従業員から同意を得る必要はありませんが、従業員も保険会社等から控除証明書等データを取得するための手続など事前準備が必要になるので、電子化する際には従業員への早期の周知が必要ですね。

給与システム等の改修等 

市販の給与システムをご使用の場合は恐らく対応されると思いますが、自社のシステムをご使用の場合には改修が必要ですね。

税務署への届出

これを忘れないようにしましょう。

所轄税務署長に、「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書」を提出し、その承認を受ける必要があります。

承認申請書と言っても難しいことは無く住所・氏名(所在地・法人税)を書いて出すぐらいのものです。

この申請書を提出した月の翌月末日までに税務署長から承認又は承認しないことの決定の通知がなければ、この申請書を提出した月の翌月末日に承認があったものとされます。

まあ、承認しないことは無いはずなので年末調整のデータを受領し始める11月に間に合わせるためには10月末承認が必要なので9月中には提出しておきたいですね。

なお、この申請の承認を受けたら書面による受付が出来なくなるというわけでは無いので電子化の可能性が少しでもあるなら提出しておいて損はないでしょう。

従業員

年末調整申告書作成用のソフトウェアの取得

国税庁が提供する「年末調整控除申告書等作成用ソフトウェア」や市販の対応ソフトなどをインストールします。

利用するソフトついては勤務先に確認しましょう。

控除証明書等データの取得

保険会社等のホームページ等から、控除証明書データを取得します。

マイナポータル連携を利用する場合は、複数の控除証明書等データをマイナポータルを通じて一括取得するため、保険会社等のホームページから取得する手間が省けるそうです。

一部分だけの電子化も可能

上記の手続き全て電子化にできない場合も一部だけ電子化することも可能です。

イメージ図は以下の通りです。(国税庁パンフレットより引用)

従業員の立場で自分は電子化したいけど勤務先が対応していない場合でもご自身で年調ソフトをダウンロード、データで証明書等を取得して年調ソフトから自動計算された申告書を印刷して会社に提出することが可能ですね。

証明書等についても電子データで取得したものはe-TaxのホームページにあるQRコード付証明書等作成システムを利用して「QRコード付控除証明書」を作成、印刷して提出すればOKです。

会社の立場としては従業員が証明書等を電子で取得してくれなくても年調ソフトからの入力をお願いすれば入力、計算の手間は省けますね。

注意点

住宅ローン控除

住宅ローン控除の年末残高証明書は令和元年分以降のものしか電子データに対応していないようです。

平成30年以前に居住開始された方は住宅ローン控除の年末残高証明書は引き続き書面で提出することになります。

レアな控除

国外居住親族の控除に係る親族関係書類や送金関係書類、勤労学生控除の証明書などあまり出てこないレアな控除は電子化に対応してないとのことで書面提出になります。

データは電子署名かパスワード設定が必要

従業員から年末調整申告書データを受領する際は従業員の電子署名を付すか、パスワードを付して暗号化して受領する必要があります。

この対応が出来ることが源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書の承認の前提になっています。

データの保管は7年間

データの保管は書面の時と同様に7年間になります。

より具体的には年末調整をした翌年1月10日から7年間です。

データ容量もそれほど重くならないはずなので問題ないですね。

今後の情報に注意

年調ソフトの公開もまだこれからですし、各保険会社・給与ソフトベンダー等の対応も明らかになっていないことが多いです。

今後の最新情報に注意してまずは所轄税務署長に、「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書」を提出しておきましょう。

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