令和2年度税制改正における各府省庁からの要望事項が財務省のHPで公表されています。
今回はその中から個人的に気になったものをお知らせします。
事業承継M&A
まず気になったのは各省庁が事業承継M&Aに対する要望を出していることです。
正確には「第三者への事業承継の促進に資する税制措置の創設」というものです。
経済産業省が主管省庁となり国土交通省、農林水産省、厚生労働省との共同要望として挙げられています。
注目度、期待度の高さがうかがえますね。
要望の内容を引用しますと以下の通りです。
2025年までに70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人であり、うち約半数の127万人が後継者未定とされているところ。現状を放置し中小企業の廃業が急増すると、10年間の累計で約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われるおそれがある。
このような状況において、平成30年に法人向けの事業承継税制が抜本的に拡充され、平成31年(令和元年)に個人事業者向けの事業承継税制が創設されたところ、事業承継をより一層後押しすべく、第三者への事業承継を促す施策を講じる必要がある。
後継者不在の中小企業の経営者が、株式譲渡や事業譲渡等のM&Aを行うことで親族以外の第三者に事業を承継(第三者への事業承継)し、経営資源の統合や知見をもった経営者等に事業を引き継ぐことによって、サプライチェーンの維持・発展につながるケースも近年見られる。
上記のような場合に生じる税負担を軽減することにより、第三者への事業承継の円滑化を図る。
具体的な施策としては外部から後継者候補のトライアル雇用を行う場合における支援策を検討するとされています。
その他にも株式譲渡にかかる税制面での優遇やデューデリジェンス費用に対する税額控除や繰延措置を検討していただくとよいかと思います。
印紙税の在り方の検討
平成22年以降、毎年経済産業省が要望しているものです。
早く進めてほしいですね。
印紙税の質問はクライアントから多くいただきますが微妙な判断を求められるものが多いです。
紙の契約書が多い企業では判断や検討に割かれる時間が多くその時間を別の業務に充てて効率化したいところです。
紙の資料がない電子取引には印紙税が課税されないなど公平性の点からもそのあり方が問われていますね。
収入印紙による歳入は年間1兆円規模(酒税や関税に近い規模)で推移しており廃止など抜本的な改正は難しいかもしれませんが少しずつでも改正に向けて動き出してほしいですね。
消費税申告期限の延長の特例の創設
これは一刻も早く実現してほしいですね。
実現することによるデメリットがないですから。
中小企業のほとんどは決算日から2か月以内に法人税・地方税と消費税を併せて申告していると思いますが、上場企業は決算日から約3か月後(3月決算であれば6月末ごろ)を株主総会日にしているため法人税と地方税は申告期限の延長申請をし株主総会日後に申告しています。
しかし、消費税については申告期限の延長制度が無いため中小企業と同じく決算日から2か月以内に提出しているのです。
これが一つにまとまることで期日管理や申告作業などの手間が減り事務負担の軽減による生産性向上・働き方改革の推進になりますね。
法人税の申告書の作成時に消費税の申告の誤りが見つかり消費税については修正申告・更正の請求なんてケースもあり、2度手間になっているものが期限が延長されることで2度手間にならなくなることが見込まれます。
今後も最新情報をお伝えします
上記に限らず気になる税制改正の動向はタイムリーにお知らせしていきたいと思います!