M&A支援

サラリーマンは300万円で会社を買っていいのか?

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サラリーマンは300万円で会社を買いなさい

昨年出版され話題になった本、「サラリーマンは300万円で会社を買いなさい」

私も知人に勧められて昨年読みました。

 

今年に入り会計編も出版されるなど注目度は益々高まっています。

 

先週木曜日にはNHKの「おはよう日本」でもサラリーマンの中小企業M&Aについて特集が組まれていました。

その内容はサラリーマンの間で「事業承継」がブームになっているとのことで都内で開かれたセミナーには1,000人が集まったのだとか。

「ある程度形になっているもの(会社)を買うのはおもしろいと思う。とりあえず買っちゃえと。」

「自分で一から起業するより手軽に経営者になれる。」などサラリーマンの間で、事業承継がブームになっているとの特集です。

私もサラリーマンが自分の夢を叶えるために起業・創業することは全力で応援しています。

その手段の一つとして小規模なM&Aがあることは選択肢が広がり歓迎すべきことと思います。

さらに今の日本が抱える「中小企業の後継者不足・大廃業時代」という問題の解決策としても推進すべきものですね。

しかし、ブームに乗って、または手軽だからというような安易な気持ちでのサラリーマンM&Aには警鐘を鳴らしたいなと。

銀行員時代から数えると中小企業と関わって10年以上、M&A案件についても売る側・買う側それぞれの立場で関わった経験から注意点をまとめたいと思います。

サラリーマンM&Aの注意点

従業員との関係

サラリーマンにも手が届く規模の中小企業は社長と従業員の関係が強固です。

社長がいるからその会社で仕事をしているという人が多いです。

裏を返せば社長がいなくなるのであればその会社にいる意味はなく、社長交代をきっかけに転職、なんてケースも十分考えらえます。

中小企業は一人いなくなるだけでも大打撃です。

現在全業種で慢性的な人手不足ですので人員の補充も困難が予想されます。

社長と従業員の関係はよく確認しましょう。

さらに自分がその会社の従業員とうまくやっていけるのかも注意が必要ですね。

いわゆる大企業の従業員とは感覚が違いますからサラリーマン時代の管理職の経験が通用しない場面も多くあると思います。

取引先との関係

従業員の関係と同様、その規模の中小企業は取引先とは会社対会社というより社長対社長という関係になっていることがほとんどです。

BtoCでも顧客は社長がいるから購入、来店しているというケースが考えられますので注意が必要です。

社長が変わったら取引先が離れていくということの無いように社長と取引先の関係はよく注意して確認しましょう。

そして取引先もまた中小企業ですので大企業のサラリーマンで取引先も大手企業ばかりだったという方は中小企業を相手にする難しさも考慮すべきですね。

資金調達

購入資金が自己資金で用意できる場合は良いですが金融機関からの借入を申し込む場合は審査が通らない可能性に注意です。

買収先企業が毎月利益が出ており返済資金は捻出できる計画がある場合でも上記のように経営者が変わることで今までの利益がそのまま計上できないと判断される可能性があります。

特にサラリーマンで今まで経営経験のない方が買収する場合は金融機関も慎重にならざるを得ません。

同業種、同業態などで管理職経験があるなどでなければ難しいのではないでしょうか。

この辺りは創業融資と同じ審査の考え方になると思います。

デューデリジェンス

法人のM&Aでは当然に実行されるデューデリジェンスをサラリーマンM&Aでも絶対に行うべきです。

M&A仲介会社から紹介された案件であればデューデリジェンスが実施されるでしょうからよいのですが、私が以前相談を受けた案件は事業引継ぎ支援センターからの案件でデューデリジェンスをするかしないかは買主にお任せみたいな感じでした。

デューデリジェンスにはそれなりの費用がかかりますが費用削減で省略するなんて考えはやめましょう。

買収後に隠れた負債(未払い残業代がある、債務保証をしている、損害賠償請求を受けている)が発覚し返済・支払いに追われるなんてことになる可能性もありますので注意です。

また、そもそも決算書上では利益が出ていてもしっかりと調べてみたら赤字(正しい経理が出来ていない)なんてこともありますので。

買収価格は妥当か

これは注意点として挙げられずともご自身で不安になる部分かと思いますが、売り手は当然少しでも高く売ろうとしますし、M&A仲介会社も成約価格×手数料率(通常3%程度)で仲介手数料率を計算しますので高めに設定しがちです。

可能であればM&Aに精通した税理士・会計士など第三者の意見が聞けるといいですね。

簡単にいい買収先が見つからない

根本的な問題点として、簡単にいい買収先が見つからないという問題があります。

おはよう日本でも紹介されていた(名前は出ていませんでしたが)M&A仲介サイトTRANBIで見てみても買収価格300万円で利益の出ている企業はほとんど見当たらないですよ。

さらに自分が経営したい事業内容となると見つけるのはさらに困難を極めます。

私たち税理士も中小企業の事業承継を後押ししようと中小企業事業承継サイト「担い手探しナビ」を税理士会が立ち上げていますがまだまだ利用が進んでいない状況です。

経営者もサラリーマンには売りたくない

東京都事業引継ぎ支援センターのよくある質問に以下のようなものもありました。

Q.現在会社に勤務しておりますが、会社経営の経験がない個人でも譲受(買収)することは可能なのでしょうか。

A.ご相談いただきニーズをお寄せいただくことは可能ですが、譲渡を希望される方が安心して経営をお任せできるか否かという観点から、会社経営の経験がない個人の方への譲渡を希望するケースは現在ないため、ご紹介に至ったケースはありません。

その通りだと思いますね。

売る側からしたら見ず知らずのサラリーマンに会社を売るなんて不安ですよね。

大切な従業員や取引先を任せるわけですから。

まず第一の売却の選択肢は大手企業になります。

そこで大手企業が手を挙げなかった会社が妥協の結果サラリーマンへの売却を検討するかもしれませんが大手企業が手を挙げなかった会社を買うのはやはりリスクですよね。

サラリーマンM&Aを成功させるには

何となく社長というものに憧れている、リタイア後にゆったり経営者生活をしてみたいなどの考えでM&Aを検討しているようなケースでは成功は難しいと思います。

まずは自分の夢や目標がありそれを叶えるための選択肢がM&Aであること。

M&Aする事業に熱意や思い入れがあること。

M&Aする事業の経験がしっかりとあること。

そのうえでさらに対象の会社が見つかったのであればすぐ買収でなくまずはその会社に就職することをお勧めします。

大手企業に売却するのは抵抗があり、できれば社内で後継者を育てたいと考える優良な中小企業はかなり存在すると思います。

そのような会社に就職するのです。

そして数年頑張り社内での信頼を得て取引先にも顔を覚えてもらいます。

その後、来るべき時が来たら社長から株を買い取り事業を引き継ぎます。

中小企業の事業承継の理想的な進め方です。

まとめ

サラリーマンM&Aはそれなりの覚悟をもって、是非慎重に検討してください。

そして税理士など信頼できるパートナーを探されることもお勧めします。

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