税理士業務

フリーランス・個人事業主の健康保険節約!社会保険加入用法人を作ることについての税務上のリスクについて。

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フリーランス(個人事業主)の方である程度の利益が出ている場合、国民健康保険料が高いと感じられる方がいらっしゃるのではないでしょうか。

国民年金保険料は利益に関係なく一律ですが国民健康保険料は前年の利益に応じて保険料が増減します。

保険料には年間の上限があり、現在は80万円ですが、厚生労働省は来年度から2万円引き上げて82万円にする案を、10月31日の社会保障審議会に示したようです。

また、40歳から64歳の人が一緒に納める介護保険の保険料についても、年間の上限額を今の16万円から1万円引き上げて、17万円にするとしているため介護保険料を合わせた保険料全体の年間の上限額は99万円となる可能性があります。

上限額に該当するのは加入者全体の1.68%になる見通しとのことです。

年間100万円近くの保険料は負担が大きいのでどうにか節約できないかと考える方も多くいらっしゃいます。

そこで使われるスキームが社会保険加入用法人を利用するスキームです。

社会保険加入用法人スキームとは

読んで字のごとくですが社会保険に加入するためだけに法人を設立するスキームです。

フリーランスの方、ご本人が社長となり(別の方が社長でも構いませんが)最低ランクの役員報酬を支給して社会保険に加入します。

社会保険に加入することで国民健康保険からは脱退することになります。

国民健康保険において保険料算出の基礎となるのは個人の所得(利益)です。

一方、社会保険は標準報酬月額という考え方がありその人(加入者)に対して支給する給与を基礎として保険料を算出します。

そこには個人事業の利益は全く関係しないのです。

フリーランスとして所得税の確定申告をしてどれだけ高い利益(所得)を計上していも社会保険の保険料の計算には影響しないことになります。

試しに最新の協会けんぽの保険料額表(東京都)を見てみましょう。

給与の月額を6万3千円未満に設定すれば最低ランクの保険料に抑えることが出来ます。

会社に雇われている場合、社会保険料は会社と従業員折半で考えるので表のそれぞれの折半額の欄を見てご自身が負担される保険料を確認することになりますが、社会保険加入用法人を設立して自分で加入した場合は全額をご自身で負担することになります。

しかし、見てください。最低ランクであれば介護保険料がかかる40歳以上であっても月額6,745円です。

年額にしても80,940円、最大年間100万円近くかかる国民健康保険料が大きく節約できます。

さらに地味な差ですが令和元年度(平成31年4月~令和2年3月まで)の国民年金保険料は月額16,410円ですので厚生年金保険料の最低ランクの金額16,104円の方が306円安いのです。

国民年金保険料より安い保険料で厚生年金に加入できるのはメリットがありますね。

また、配偶者に所得が無く(または所得が低く)扶養親族にされている場合、フリーランスだと夫婦それぞれで国民年金保険料を支払わなければなりませんが厚生年金に加入できれば扶養親族である配偶者は第3号被保険者となり年金保険料が発生しません。

すると国民年金保険料お一人分丸々得しますので年間196,920円が節約できることになります。

法人成りした場合は?

余談ですが、個人事業を完全にやめて法人成りした場合の保険料の上限を見てみましょう。

協会けんぽの最大保険料は介護保険料含む健康保険料で年間1,939,884円(161,657円×12か月)、厚生年金保険料で1,361,520円(113,460円×12か月)。

合計約330万円です。

国民健康保険の上限約100万円と国民年金保険料の年額約20万円の合計が約120万円です。

なんと約210万円もの差が!

厚生年金保険料は将来受け取る年金額に反映されるのでまだいいとしても健康保険料はどれだけ多く払っても受けられるメリットは一定で変わりません。

法人を設立した方が税金的には節税になるのですが、社会保険料を加味するとトータルのキャッシュアウトは法人を設立した方が大きくなってしまうため法人設立せずにフリーランス・個人事業のまま続けられる方もおおくいらっしゃいます。

税務上のリスクは?

社会保険加入用法人設立スキームは社会保険の制度上は問題がないスキームですがこのスキームに絡んだ税務上の問題はないのでしょうか。

社会保険加入用法人を設立して社会保険に加入する場合、法人から個人に給与を支払う必要があり、当然ですが法人から社会保険料を支払う必要もあります。

社会保険加入用法人で外部から売上などの収入が入ってきませんので通常、個人から法人に何かしらの売上という形で支払いを発生させる必要が生じます。

法人が個人事業の事務のサポートをしているということで業務委託料のようなかたちで売上を発生させるケースが一般的かと思います。

法人側では売上になる一方、個人事業者の事業所得の計算上は必要経費になるのでその分が個人事業の所得税を計算するうえで節税になります。

法人は売上と同額の給与と社会保険料を支払う設定にするため利益は発生せずに納税はゼロです。

結果的には個人から法人に支払う業務委託料=法人が個人に支払う給与+社会保険料が個人事業の経費になるということ。

結局は法人の社長と個人事業者は同一人物なので自分が自分に給与を払って経費にするということが認められるかどうか。

税務調査があった際は指摘される可能性がありますね。

それであればいっそのこと個人から法人への支払いは個人側で経費にせず、法人側でも売上にせず、お金の貸し借りということにすればよいでしょう。

法人は借入が増える一方で給与+社会保険料の損失が溜まる一方ですが。

税務的には問題ないでしょう。

社会保険加入用法人を設立することによる追加コスト

いいことばっかりのように思える社会保険加入用法人設立スキームですがデメリットもあります。

それは追加コストが発生する点です。

法人の設立・維持

まずは法人設立時の設立登記費用が発生します。

株式会社で司法書士などの専門家に依頼するとおよそ30万円程度が相場ではないでしょうか。

合同会社で、設立登記も自分でやれば最低6万円(と資本金最低1円)で設立は可能です。

株式会社では役員の任期が最長10年であり10年に1度は役員の重任(再任)登記をする必要があるため登記の際に登録免許税1万円が発生します。

当期を司法書士にお願いすれば別途司法書士報酬も発生することになります。

ただ合同会社であれば役員の重任登記は不要なので発生しません。

社会保険の加入と毎年の手続き

当然のことながら社会保険加入手続きが必要で国民健康保険・国民年金より手間がかかる点も注意しなければなりません。

社会保険労務士に外注する場合は相場としてはだいたい3万円ぐらいでしょう。

また、年に1回社会保険算定基礎届の提出をしなければなりません。

こちらを社会保険労務士に外注する場合は相場としてはだいたい2万円ぐらいでしょう。

毎年の税務申告

利益が出ていなくても毎年決算をして税務署と都道府県・市区町村に税務申告をする必要があります。

利益が出ていなければ法人税・法人事業税は発生しませんが法人住民税の均等割が最低でも年間7万円は発生します。

ちなみに消費税は年間売上が1,000万円を超えないことが想定されるため永遠に免税事業者ですね。

これらの追加コストを考慮しても上限の年間100万円近くの国民健康保険料を払っている方であれば十分メリットがありますし、上限に達していない方でも検討の余地はありますね。

まとめ

大きいメリットがある社会保険加入用法人設立スキームですが、高齢化で悪化している日本の保険財政事情から考えると制度改正で使えなくなる日がくるかもしれませんね。

個人事業で事業所得が発生している場合はその部分について追加で保険料を払う必要が出てくるとか、個人事業の所得も標準報酬に加味する必要が出てくるとか、何かしらの対策がされる可能性は十分にあります。

ただ、現在はこのスキームが問題なく利用できるのでご興味のある方はご検討ください!

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コメント

  1. アンディ より:

    こんにちは。初めまして。
    もしよろしければご質問させてください。
    今個人事業主で国保と国民年金に加入しており、1.000万円程度の所得があります。まさにこのスキームを検討しているのですが、妻が100万円程度のパート収入があり、妻が扶養に入るためには自分が2倍の収入が必要になると思います。その際、設立した法人からの給与が年間200万円ないとダメなのか、事業所得で超えているから最低賃金でもいいのかどちらでしょうか?

    1. 税理士 島田悠太朗 より:

      アンディさん、こんにちは、初めまして。
      ご質問ありがとうございます。

      以下、協会けんぽのホームページからの引用です。
      >認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満である場合は被扶養者となります。
      >なお、上記に該当しない場合であっても、認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入を上回らない場合には、その世帯の生計の状況を果たしていると認められるときは、被扶養者となる場合があります。

      以下は年金機構のホームページからの引用です。
      >収入が扶養者(被保険者)の収入の半分以上の場合であっても、扶養者(被保険者)の年間収入を上回らないときで、日本年金機構がその世帯の生計の状況を総合的に勘案して、扶養者(被保険者)がその世帯の生計維持の中心的役割を果たしていると認めるときは被扶養者となることがあります。

      実際私の事務所の顧問先の方で「被保険者の年間収入(夫)<認定対象者の年間収入(妻)」で奥様を扶養にしている方がいらっしゃいました。
      このあたりは社会保険労務士の専門分野のため詳細な実務は社会保険労務士にご相談いただいた方がよろしいかと思いますが協会けんぽ・年金機構ともに柔軟に対応してくれる印象があります。

      ただ、アンディさんの場合、ご指摘の通りご自身の事業所得が多くあるようですので「被保険者の年間収入(アンディさん)>認定対象者の年間収入(奥様)」と考えて問題ないと思います。

      1. アンディ より:

        お忙しいところご返信助かりました。また、税金以外のご質問失礼いたしました。色々調べたところ、なかなかグレーゾーンぽい感じがしましたので、自己責任で実際やるかどうか迷っているところです。ありがとうございました。

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