所得拡大促進税制を適用するにあたり、出向がある場合は集計がやや複雑になります。
今回は所得拡大促進税制の適用における出向負担金がある場合の注意点についてです。
出向元法人における出向者の取り扱いについて
出向元法人で出向者に対して支給する給与はその出向元法人に出向者の賃金台帳がある場合は出向元法人の所得拡大促進税制の適用上、給与等支給額に含めることになります。
そして出向元法人が出向先法人から出向負担金を受け取っているのであれば受け取った出向負担金は出向元法人の所得拡大促進税制の適用上、給与等支給額から控除することになります。
図で示すと以下の通りです。(中小企業庁のQ&A資料から引用)
出向先法人における出向者の取り扱いについて
出向先法人においては出向者の賃金台帳を作成していれば出向負担金を出向先法人の所得拡大促進税制の適用上、給与等支給額に含めることができます。
図で示すと以下の通りです。(中小企業庁のQ&A資料から引用)
通達で確認
以上の取り扱いは、租税特別措置法基本通達に記載されています。
出向先における通達は以下の通りです。
ちなみに労働基準法は以下の通りです。
継続雇用者給与等支給額も同じ考え方です
給与等支給額に含まれなければ継続雇用者給与等支給額にも含まれませんのでご注意ください。
以下、租税特別措置法と措置法施行令の抜粋です。(部分的な切り取りですので詳細な検討の際は全文をご確認ください)
注意点
出向先の計算においては、賃金台帳に出向者の賃金の額等を記載しておらず、出向元から請求のあった給与相当額を支払っているだけでは所得拡大促進税制適用上の給与等支給額には含まれないことになってしまいます。
出向元の計算においては、「出向者に支払う賃金-出向先から受け取る出向負担金=0」となれば出向者に支払う賃金は所得拡大促進税制適用上の給与等支給額には含まれないことになってしまいます。
結果、出向者に対する給与は出向元法人の計算にも出向先法人の計算にも含まれないことになってしまいます。
そのような出向者に対する給与をいくら増やしても増やした額に応じる法人税の控除が適用できないことになりますので注意しましょう。
出向元で給与計算をし賃金台帳に記載されている場合、出向先の賃金台帳には記載されないことの方が多いかと思います。
同じ内容を出向元、出向先で記載するので2度手間のような気もしますよね。
しかし所得拡大促進税制の集計上、出向者の給与を反映させるためには手間であっても出向先でも賃金台帳に記載するようにしましょう。
なお、その場合、出向元で雇用保険に加入しており出向先では雇用保険に加入しないため所得拡大促進税制上の継続雇用者に該当しないのではないかと疑問に思われる方がいらっしゃるかもしれません。
この点については国税庁の文書回答事例に「継続雇用者に含める」と記載されておりますので継続雇用者に該当するものとして計算を進めましょう。
以下、文書回答事例のリンクです。
出向負担金を支出した場合の租税特別措置法第42条の12の4《雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除》の適用について