税理士業務

相続時精算課税を適用した財産がある場合の延納期間

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国税庁が昨年12月15日に公表した平成28年分の相続税の申告状況によると平成28年に相続税の課税対象となった人は全国で10万5,880人いたようですね。

課税割合は8.1%で過去最高です。

平成27年1月1日から基礎控除が引き下げられ、相続税の課税対象となる人が大幅に増えています。

ちなみに全国平均の課税割合が8.1%なわけですが東京だけでみると15.8%と約倍になり、だいたい6人に1人ぐらいの割合で相続税の課税対象になっています。

相続税の納付

さて、相続税の課税対象になり納付が必要になる場合、相続税は現金一括納付が原則になるわけですが例えば不動産だけを相続した場合や上場していない中小企業の株だけを相続した場合などはすぐに売却することが難しいため相続税の納税資金を捻出できないケースがでてきます。

そんな時の救済措置として延納と物納があります。

相続税の物納

順番としてはまず現金一括納付、それが難しければ次に延納、延納も難しい場合に物納になります。

物納は読んで字のごとく物で納付することです。

相続した財産をそのまま国に納めるのですが物納が認められない財産があったり物納に充てるべき順位が決まっていたり結構面倒な制度になっています。

国としても物納されたはいいけど売却できなかったら税収にならないですからね。

厳しい審査があるわけです。

担保が付いていたり境界確認が出来ていなかったりする土地など売却できないようなものは物納できませんし市場で売却できそうな不動産や有価証券なんかが優先的に物納に充てられます。

ちなみに今回のテーマでもある相続時精算課税を適用した財産は物納の対象とすることはできません。

相続税の延納

さて、本題の延納ですが延納とは国税庁のホームページによると以下のように記載されています。

国税は、金銭で一時に納付することが原則です。しかし、相続税額が10万円を超え、金銭で納付することを困難とする事由がある場合には、納税者の申請により、その納付を困難とする金額を限度として、担保を提供することにより、年賦で納付することができます。
これを延納といいますが、この延納期間中は利子税の納付が必要となります。

年賦ですので1年に1回支払えばいいわけですね。

では何年間での分割になるのか。

これは相続財産のうちに占める不動産等の割合で延納期間が決まることになっています。

不動産等の割合が高ければ最長20年の延納期間が設定できますが不動産の割合が50%未満になると最長5年までしか延納期間が設定できません。

不動産等の割合

では不動産等の割合とはどのような割合なのか。

相続税法38条に記載があります。

相続又は遺贈により取得した財産で当該相続税額の計算の基礎となつたものの価額の合計額(以下「課税相続財産の価額」という。)のうちに不動産、立木その他政令で定める財産の価額の合計額(以下「不動産等の価額」という。)が占める割合

ここから本題である相続時精算課税を適用した財産が延納期間を決定する上での不動産等に含まれるのかを判断します。

上記38条から抜粋した条文の冒頭、「相続又は遺贈により取得した財産」というところがポイントですね。

相続時精算課税を適用した財産は相続時精算課税贈与により取得しているので相続にも遺贈にも該当せず延納期間を決定する上での不動産等には含まれないことになります。

ただ、例外として相続が開始した年の相続時精算課税は延納期間を決定する上での不動産等には含まれることが相続税法基本通達38-3に記載されています。

法第19条の規定により相続税の課税価格に加算される贈与財産で法第21条の2第4項の規定の適用があるもののうちに不動産、立木等法施行令第13条に規定する財産がある場合においては、当該財産は、法第38条第1項に規定する「相続又は遺贈により取得した財産」に含むのであるから留意する。

また、相続開始の年において、特定贈与者である被相続人からの贈与により取得した相続時精算課税の適用を受ける財産のうちに不動産、立木等法施行令第13条に規定する財産がある場合についても、これに準ずるのであるから留意する

まとめ

相続時精算課税を適用した財産は延納期間を決定する上での不動産等に含まれないため、相続時精算課税を適用した財産のみが相続税計算上の課税財産になった場合、仮にそれが全て不動産であったとしても不動産等の割合は0分の0で0%になり延納期間は最長で5年になってしまいます。

被相続人から現預金や換金性のある有価証券を相続しておらず納税資金が無い人でも延納期間が最長5年になってしまうのは酷な気がしますが現在の法令上はそのような設計になっているんですね。

相続開始の年より前に取得しているのであれば相続税が発生することは分かっているから相続が発生するまでに準備できる(売却するなど)という考えのもとの制度設計かもしれませんが仮に相続時精算課税を適用して贈与を受けた財産が自宅でありその他に現預金や換金性のある有価証券等を生前贈与や相続で取得していない場合は納税資金に困りますよね。(自宅を売却しないといけないかもしれません)

さらに相続時精算課税財産のみ取得した人が全く知らない多額の相続財産を被相続人が保有していてそれを全て他の相続人が取得した場合などは相続財産の総額を基に相続税を計算するため思ってもみない高額な納税が急遽発覚する事態も想像できます。

今後の税制改正が望まれるところですね。

おまけ

延納をする場合、担保を提供しければなりませんが相続時精算課税を適用した財産も担保として提供することができます。

相続又は遺贈により取得した財産に限らず、相続人の固有の財産や共同相続人又は第三者が所有している財産であっても担保として提供することができますのでね。

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