平成31年度税制改正によりストックオプション税制の適用対象範囲が拡大されました。
中小企業等経営強化法の改正により、スタートアップ(ベンチャー企業)が社外の高度人材(プログラマー・エンジニア、弁護士・税理士・会計士等)を活用して成長を実現していくことを支援するため、社外の高度人材を活用して新事業分野を開拓する計画の認定制度が創設されました。
認定を受けたスタートアップに対しては税制上の支援としてストックオプション税制の適用対象に一定の要件を満たす社外高度人材が追加されました。
改正の趣旨
スタートアップでは役員、従業員という立場でない兼業や副業のプログラマーやエンジニア、または独立して活動する税理士や会計士、弁護士など、社外の高度人材、専門家の力を借りることが多くあります。
役員や従業員にはストックオプションという形の報酬制度を取り、これらの社内の人材にインセンティブを与えながら税制的にも優遇して報酬を設定することができました。
一方でスタートアップの成長に欠かせない社外の高度人材、専門家についてはストックオプションを付与すると税制上の優遇が受けられない状態でした。
この問題を解決し、スタートアップがより積極的に社外の高度人材、専門家を活用できるようにしたのが今般の改正です。
ストックオプション税制活用のメリット
そもそもストックオプション税制活用のメリットは何でしょうか。
通常のストックオプションは権利行使時に所得税が課税されますがストックオプション税制の活用により権利行使後の株式の売却時まで課税を繰り延べることが出来ます。
課税を繰り延べるメリットは2つあります。
1つは、売却時に課税されることで給与所得や事業所得とは分離した譲渡所得としての分離課税でかつ低い税率(住民税等含めて20.315%)が適用できる点です。
権利行使時に課税されてしまうと役員、従業員であれば給与所得、外部人材であれば事業所得の可能性もあり、総合課税の所得税率は最高45%、住民税・事業税や消費税を含めた税率は約70%になってしまう可能性もあります。
2つ目は権利行使時に課税されてしまうとその時点では株式の状態であり現金が手元にない可能性があるため納税資金捻出のため権利行使したばかりの株式を売却しなければならない可能性がありますが、課税が繰り延べられれば納税が発生しないため株式を売却せずに持ち続けられる点です。
もっと頑張って会社の株価を上げてから売却することが出来ますね。
適用開始
令和元年7月16日に中小企業等経営強化法の一部を改正する法律が施行されたことにより同日、ストックオプション税制の適用拡大に関する新たな計画認定制度がスタートしました。
適用を受けるための条件
適用を受けるためにはいくつかの条件があります。
スタートアップに関わる高度人材を対象にするためストックオプションを発行する法人は設立10年未満の法人である必要があります。
また、「社外高度人材活用新事業分野開拓計画」を策定し、主務大臣による認定を受ける必要があり、当該計画に沿って行う新事業に従事する社外の高度人材が適用対象になります。
さらに、租税特別措置法等の関係法令にも細かい要件がありますので導入の際は慎重に確認しましょう。
注意点
役員、従業員等を対象にしたストックオプションはその相続人についてもストックオプション税制の対象になりますが今回の改正で範囲が拡大された社外の高度人材の相続人はストックオプション税制の対象になりません。
また、認定社外高度人材活用新事業分野開拓計画の開始の日からストックオプションの権利行使の日まで引き続き日本の居住者であることも要件となっております。
さらに権利行使後売却せずに国外転出(日本の居住者でなくなった)した場合はその国外転出の時に権利行使時の価額で売却されたものとして所得税が課税されます。
日本で頑張る人材を積極活用するための税制ということですね。
まとめ
適用要件や手続きはやや複雑で手間もかかりそうですが、高度外部人材を有利な条件で積極的に活用するため、今般のストックオプション税制の改正は利用をオススメしたいですね!