税理士業務

所得税の還付申告は5年間提出ができるから3月15日を過ぎても大丈夫!?いやちょっと待って!注意点があります!!

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所得税の確定申告期限である3月15日が迫ってきましたね。

ただ、所得税の還付申告書は、確定申告期間とは関係なく対象となった年の翌年1月1日から5年間提出することができます。

現在、令和4年分の確定申告期間ですが令和4年分の還付申告書であれば令和9年12月31日まで提出できるということですね。

「なーんだ、じゃあ急いで3月15日までに出さなくてもいいんだー」と思ったそこのあなた!

注意点がありますので是非ご確認ください!

還付申告のケース

まずは還付申告になるケースを確認しておきましょう。

  1. 年の途中で退職し、年末調整を受けずに源泉徴収税額が納め過ぎとなっているとき

  2. 一定の要件のマイホームの取得などをして、住宅ローンがあるとき

  3. マイホームに特定の改修工事をしたとき

  4. 認定住宅等の新築等をした場合(認定住宅等新築等特別税額控除)

  5. 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき

  6. 特定支出控除の適用を受けるとき

  7. 多額の医療費を支出したとき

  8. 特定の寄附をしたとき

  9. 上場株式等に係る譲渡損失の金額を申告分離課税を選択した上場株式等に係る配当所得等の金額から控除したとき

(国税庁ホームページより引用)

上記のようなケースで還付申告をすることになりますが、その他のものも併せて申告するときに、期限内(3月15日までに)申告をしないと適用が受けられないものがあったりしますので注意が必要なんです。

期限内(3月15日までに)申告をしないといけないもの

青色申告特別控除(65万円控除)

青色申告の特典のうち、青色申告特別控除(65万円・55万円控除)の適用を受けるためには期限内(3月15日までに)申告が必要になります。(租税特別措置法第25条の2)

なお、10万円控除の場合は期限内申告が要件にはなっていません。

純損失の繰戻還付

こちらも青色申告の特典です。

その年に生じた純損失を前年分の所得金額から控除したところで税額を再計算すると還付となる場合などにできる還付の手続きです。(所得税法第142条)

還付のためには純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書を申告期限内に提出する必要があります。

マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき

マイホーム(旧居宅)を売却して、新たにマイホーム(新居宅)を購入した場合に、旧居宅の譲渡による損失が生じたときは、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)することができます。

さらに、損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年内に繰り越して控除(繰越控除)することができます。(租税特別措置法第41条の5)

この特例のうち、繰越控除の適用を受ける場合には、損益通算の適用を受けた年分について、期限内申告書を提出していることが要件になっています。

さらに損益通算の適用を受けた年分の翌年分から繰越控除を適用する年分まで連続して確定申告書(損失申告用)を提出することも要件です。

住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき

住宅ローンのあるマイホームを住宅ローンの残高を下回る金額で売却して損失が生じたときは、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)することができます。

さらに損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年間繰り越して控除(繰越控除)することができます。(租税特別措置法第41条の5の2)

この特例のうち、繰越控除の適用を受ける場合には、損益通算の適用を受けた年分について、期限内申告書を提出していることが要件になっています。

さらに損益通算の適用を受けた年分の翌年分から繰越控除を適用する年分まで連続して確定申告書(損失申告用)を提出することも要件です。

青色申告の取り消しについて

なお、2期連続で期限後申告になると法人税の青色申告については取り消しがされることになっています。

所得税については事務運営指針や所得税法では期限後申告になることによる青色申告の取り消しについては言及されていません。

住民税の「納税通知書が送達される時まで」に申告しないといけないもの

所得税の確定申告をすると自動的に自治体に所得税の確定申告の情報が伝わって住民税が課税されるのですが、還付申告を遅らせると各種有利な税制の適用期限までに自治体に情報が伝わらず住民税の課税が適切にされないことがありますので注意が必要です。

特定配当等・特定株式等譲渡所得の住民税申告不要制度 

特定配当等とは、上場株式等の配当等のうち大口株主等が支払を受けるものを除く配当及び利子で、所得税と個人住民税が20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、道府県民税配当割5%)の税率で源泉徴収(特別徴収)されているものをいいます。

特定株式等譲渡所得金額とは、特定口座のうち源泉徴収口座に受け入れた上場株式等の譲渡所得等で、所得税と個人住民税が20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、道府県民税配当割5%)の税率で源泉徴収(特別徴収)されているものをいいます。

これらについては所得税と個人住民税で異なる課税方式(申告不要制度・総合課税・申告分離課税)を選択できますが納税通知書が送達される時までに申告する必要があります。

なお、この制度については令和4年分の確定申告で終了になります。

(地方税法第32条第15項、第313条第15項)

青色事業専従者給与の必要経費算入

青色事業専従者給与の必要経費算入についても住民税のみで適用しようとする場合(所得税の申告義務がない場合や、所得税は扶養控除を適用し住民税は専従者給与を適用する場合など)は納税通知書が送達される時までに申告する必要があります。

所得税の方で青色申告をする場合は青色申告特別控除(65万円・55万円控除)のために期限内申告をすると思いますので、このケースは相当なレアケースですね。

(地方税法第32条第3項及び第6項、第313条第3項及び第6項)

居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失及び繰越控除

所得税の「マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき」と同じものです。

所得税も期限内申告が求められるため所得税の期限内に間に合わせていれば問題ないですね。

(地方税法附則第4条第3項及び第4項及び第9項及び第10項)

特定居住用財産の譲渡損失及び繰越控除

こちらは所得税の「住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき」と同じものです。

所得税も期限内申告が求められるため所得税の期限内に間に合わせていれば問題ないですね。

(地方税法附則第4条の2第3項及び第4項及び第9項及び第10項)

住宅借入金等特別控除(平成30年度分まで)

住宅ローン控除について、所得税から控除しきれなかった額は個人住民税で税額控除することができます。

平成30年度分以前については納税通知書が送達された後に住宅借入金等特別控除の申告がされた場合、住民税について控除の適用を受けることはできません。

ただ、平成31年度税制改正により、「納税通知書の送達以前の申告」の要件が不要となりました。

そのため、平成31年度分以後については納税通知書が送達された後に住宅借入金等特別控除の申告がされた場合でも、住民税について控除の適用を受けることができるようになりました。

(地方税法附則第5条の4第3項及び第8項、附則第5条の4の2第2項及び第7項)

居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得に係る個人の住民税の課税の特例

その年1月1日において所有期間が10年を超える居住用財産を譲渡した場合には、長期譲渡所得の分離課税の税率が次のように軽減されます。

① 課税長期譲渡所得金額が6,000万円以下である場合
  課税長期譲渡所得金額×10%(住民税 4%)
② 課税長期譲渡所得金額が6,000万円を超える場合
  600万円+(課税長期譲渡所得金額-6,000万円)×15%(住民税 5%)

この住民税の税率を適用するためには納税通知書が送達される時までに申告する必要があります。

(地方税法附則第34条の3第2項及び第4項)

上場株式等の譲渡損失及び繰越控除

上場株式等を金融商品取引業者等を通じて譲渡したこと等により生じた譲渡損失の金額がある場合は、その年分の上場株式等の配当等に係る利子所得の金額および配当所得の金額と損益通算ができます。

また、損益通算してもなお控除しきれない損失の金額については、翌年以後3年間にわたり、上場株式等に係る譲渡所得等の金額および上場株式等に係る配当所得等の金額から繰越控除することができます。

この特例について住民税の適用を受けるためには納税通知書が送達される時までに申告する必要があります。

(地方税法附則第35条の2の6第1項及び第5項及び11項)

特定中小会社の株式譲渡所得(損益通算及び繰越損失を含む)

いわゆるエンジェル税制ですね。

エンジェル税制についても住民税の適用を受けるためには納税通知書が送達される時までに申告する必要があります。

(地方税法附則第35条の3第2項及び第3項及び第5項及び第12項及び第13項及び第15項)

先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除

FXなど先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除も住民税の適用を受けるためには納税通知書が送達される時までに申告する必要があります。

(地方税法附則第35条の4の2第1項及び第7項)

「納税通知書が送達される時まで」とは

「納税通知書が送達される時まで」とは、住民税を給与から天引きされている方は会社に特別徴収税額決定通知書が届くまで、また住民税を納付書や口座引き落としで納付されている方、住民税を公的年金から天引きされている方は、市役所から当該年度の納税通知書が届くまでとなります。

自治体から支給されるものにも注意が必要

自治体が把握している所得等を基準に支給が決定されるものについては還付申告を遅らせることで自治体に正確な所得等の情報が伝わらず、支給がされないことがありますので注意が必要です。

児童手当

児童手当では、前年の所得を確認し、所得額から控除額を引いて算出した算定額を、所得制限額および所得上限額と比較しています。

控除額には医療費控除や小規模企業共済等掛金控除(iDeCoなど)が含まれますのでこれらを含む還付申告をしておけば所得制限に引っかからなかったものが還付申告をしなかったために引っかかってしまうということはあり得ます。

これについては後で再申請すれば遡及して再計算がされることになりますが再申請の手間がありますので早めに還付申告をしておきましょう。

現在議論されている児童手当の所得制限撤廃が実現すればこの問題はなくなりますね。

保育料

保育料は、原則として父母の住民税額の合計をもとに決定しています。

算定基礎となる住民税額は、前期(4~8月)の保育料は前年度の住民税額、後期(9~3月)の保育料は今年度の住民税額となります。

還付申告で住民税額が変更になった場合、自治体の窓口で手続きすれば手続き後の保育料は変更になる場合があります。

しかし遡っての変更については内閣府ホームページに記載されている「子ども・子育て支援新制度、自治体向けFAQ(よくある質問)」によれば、「市町村の判断で、更正後の利用者負担額を当該年度分は遡及して適用するなどの取扱いをすることは妨げませんが、国の給付額の遡及は行いません。」とのことです。

遡及は全くしないこととする自治体もありますので注意が必要です。

やはり早めに還付申告しておく方がよさそうですね。

幼児教育・保育の無償化

0~2歳児クラスで住民税非課税世帯は無料になります。

これも原則遡及しないようですので還付申告で該当するようになる場合は早めに申告しておきましょう。

高校無償化(高等学校等就学支援金制度)

高校無償化での所得要件は、「課税標準額(課税所得額)×6% - 市町村民税の調整控除の額」で算出します。

令和2年7月から計算式が変更になりました。

それまではふるさと納税の控除や住宅ローン控除が影響するような計算式でしたがそれらの控除(税額控除)は影響しなくなりました。

これも原則遡及しないようですので還付申告で該当するようになる場合は早めに申告しておきましょう。

臨時特別給付金など

コロナ禍で支給された臨時特別給付金や緊急支援給付金など、住民税非課税世帯が対象になるものについても申請期限の関係などから還付申告の反映が間に合わない可能性がありますね。

やはり還付申告は早めにやっておきましょう。

まとめ

所得税の還付申告が遅れることで住民税の年度途中での金額変更がおきたり、場合によっては住民税の還付申請の手間がかかったりします。

フリーランスの方については国民健康保険料にも同様の影響がでますね。

諸々の手間や損失を考えるとやはり期限通り3月15日までに、もしくは遅くとも3月中には申告しておきましょう!

 

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