起業・創業支援

社長一人の会社で新たに役員が就任する場合の注意点

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会社法の施行前は、株式会社の役員は最低でも4人必要でした。

しかし、会社法の施行に伴い、取締役が1人だけの株式会社を設立できるようになったため創業時は社長一人で事業を行っている方も多いと思います。

会社が大きくなっていくにつれて従業員も増え、どこかのタイミングで「幹部社員を役員に」という検討をするケースがあると思います。

今回はそのようなケースにおける注意点として会社、役員になる方、双方の立場でメリット・デメリットをまとめてみました。

会社として

役員を増やすことのメリット

対外的な信用度が増す

役員が社長一人より複数いた方が会社としての安心感があります。

社長にもしものことがあった場合も役員が対応できると考えられますね。

役員は次期社長(後継者)であるとも考えられるため、結果的に取引先・金融機関等、外部からの信用度が増します。

役員になった人の責任感が増す

従業員を役員にすることで役員になった人の責任感が増し、より積極的に仕事を行うようになることが考えられます。

モチベーションがアップするなどの効果が期待できますね。

周りにも良い影響を及ぼしてくれる可能性もあります。(パワハラ問題など逆の効果に注意も必要ですが)

社内での役職の幅が増える

役員というポジションがあることが明確になることで従業員にそれを目指すモチベーションがアップします。

上下関係の幅が増えることは組織が大きくなっていく過程では必要になることですね。

役員を増やすことのデメリット

報酬について税務調査で着目される

役員の報酬は基本、毎月同額を支払い期首から3か月を超えると期中で変更できない(定期同額給与)、賞与は事前に税務署に届出した金額ぴったりで支払わなければならない(事前確定届出給与)など自由が利きません。

このデメリットを解消する方法として使用人兼務役員(取締役〇〇部長など)とする方法があります。

使用人兼務役員の使用人分報酬は他の従業員と同じルールで計算していれば毎月同額でなくても、また、賞与を支払ったとしても経費として認められます。

しかし、「従業員と同じルールで計算」しているかどうかが税務調査のポイントになります。

「従業員と同じルールで計算」していないと認定されると役員報酬、役員賞与として経費として認められない可能性があるため注意が必要です。

事務作業の手間が増える

従業員とは区別して役員を管理する必要があるため、社長一人が役員であった時と比べ手間が増えます。

上記にあるような役員報酬の管理、また、雇用保険の計算の際にも使用人分は雇用保険を徴収し役員報酬分は雇用保険を徴収しないことになりますので役員報酬と使用人報酬の明確な計算基準を作って分けることが求められます。

このあたりの事務作業の手間が生じることもデメリットの一つです。

役員の就任、退任、重任に登記が必要

役員の就任、退任時に法務局への会社登記変更が必要になるほか、役員就任期間は最長10年ですので就任期間が満了後、継続して役員でいる場合は重任登記が必要になります。

結果的に役員就任期間の管理の手間や登記費用が新たに発生し、さらに登記を忘れると罰金が科されるというリスクも増えます。

新たに役員になる従業員として

新たに役員になることのメリット

対外的な信用度が増す

取引先からすると「取締役が来た」ということで従業員とは扱いが異なることになります。

また、決裁権限のある人間が来たということで話の進みが早くなると思われます。

知人・友人・家族にも「取締役になったぞ」と少し自慢できますでしょうか・・・

役員報酬を得ることが出来る

これは会社がいくら出すかのさじ加減にもよりますが一般的には役員になることで収入が増加します。

使用人兼務役員であればそれまでの使用人分報酬に上乗せして役員報酬が支給されることになります。

会社での発言権が強くなる(重要な意思決定・経営に携われる)

これも会社の方針によりますが一般的には取締役会が開催され重要な意思決定に携われるようになります。

それまでよりも社長に対して意見しやすくなることも考えられます。

新たに役員になることのデメリット

どこかの場面で法的責任が生じる可能性がある(取締役の善管注意義務)

私が関与していた法人でも従業員からの訴えの相手が会社と役員になっていました。

いわゆる中小企業でしたが億単位の訴訟です。

取締役には善管注意義務があるためです。

従業員であればそこまでの責任が問われません。

ローンの審査が通りづらくなる可能性がある

サラリーマンより役員の方が審査は厳しくなることが多いです。

自営業者と同じ扱いにされるためです。

労災保険・雇用保険に加入できなくなる

役員は労働者ではないため労災保険・雇用保険に加入が出来ません。

なお、使用人兼務役員であれば使用人の立場として労災保険・雇用保険に加入できます。

ただし、取締役会への参加など、役員としての職務を執行中に生じた事故に対しては、労災保険の保険給付は受けらえませんので、注意が必要です。

まとめ

社長以外の人が新たに役員になる際にはメリット・デメリットをよく確認し慎重に検討しましょう。

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