前回、個人事業者が赤字の場合、所得税の確定申告はする義務がない旨をお伝えしました。
今回は個人事業者が赤字の場合、確定申告義務はないものの、確定申告しておいた方がいいというお話です。
税金面
税金面、所得税の観点から確定申告しておいた方がいいです。
赤字の繰越しができる
所得税では事業所得の赤字、つまり損失額を翌年以後3年間にわたって繰り越して、各年分の所得金額から控除することができます。
この制度を使うには所得税の青色申告をする必要があるのです。
今年がたまたま赤字であっても来年以降に黒字になる可能性があれば確定申告をして赤字を繰り越しておいた方が後々得しますね。
赤字の繰戻しができる
繰越しの逆です。
前年も青色申告をしている場合は、純損失の繰越しに代えて、その損失額が生じた年の前年に繰り戻して、前年分の所得税の還付を受けることもできます。
前年に所得税を納税している前提ですが。
赤字の損益通算ができる
前回は事業所得のみのケースで検討しておりましたが仮に事業所得以外の所得がある場合、事業所得が赤字であればその赤字を事業所得以外の所得と通算することができます。
所得税が源泉徴収されている給与所得がある場合などは損益通算の結果、源泉徴収されていた所得税が還付になります。
この還付を狙ってサラリーマンが事業とはいえない規模の活動を赤字の事業所得として申告するケースがたまにありますが、そのようなケースには税務署も目を光らせています。
ある日、税務調査が来て不正還付とされた場合、今まで還付を受けた金額の返還に加えてペナルティの税金を支払うことになりますので注意しましょう。
税金面以外
税金面(所得税)以外でも申告をしておいた方がいいケースがあります。
赤字で所得が無いことを申告(所得税の確定申告)することでお住いの自治体にもその情報が伝わります。
するとお住いの自治体で住民税非課税の認定がされ各種の恩恵が受けられるのです。
国民健康保険の軽減
国民健康保険料が減額されます。
東京都23区内では、所得に応じて2割から7割の減額となっていますが、取り扱いは各自治体によって異なるため、詳細はお住いの自治体に確認しましょう。
高額療養費の算定
高額療養費とは、ひと月にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が、あとで払い戻される制度です。
これも所得に応じて自己負担限度額が変わるため所得がゼロであることを申告しておけば一番低い自己負担限度額になり高額療養費の払い戻し金額が大きくなります。
国民年金の免除
月額16,410円(平成31年4月~令和2年3月まで)の国民年金保険料の免除を申請する際には、住民税の申告がされていることが前提となります。(所得税の確定申告をしていればそれでもOK)
赤字で所得が無い申告がされていれば国民年金保険料の免除を受けることが出来るのです。
その他、自治体のサービスや恩恵が受けられる
幼稚園等の保育料負担の軽減判定、幼稚園等の入園の際の補助金の増額、健康診断やがん検診の料金減免、市営住宅等の賃料算定等、各種行政サービスを受ける際に住民税の申告(所得税の確定申告)がされていて自治体が所得がゼロであることを把握している必要があるものが多くあります。
まとめ
赤字であっても確定申告をするメリットは多くあります。
むしろ確定申告をしないことがデメリットになると思われますので、赤字でも確定申告をしましょう!
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