税理士業務

法人が固定資産(土地・建物)を売却した時の税金計算の注意点(法人税・消費税)

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不動産業以外の法人にとって固定資産(土地・建物)の売却はめったにないことです。

結構な一大事ですので税務・会計処理も慎重に検討する必要がありますね。

ということで今回は法人が固定資産(土地・建物)を売却した時の税金計算の注意点について、法人税・消費税を中心にまとめてみたいと思います。

売却益が法人税の課税対象

これは基本的なところですので皆様問題ないかと思います。

売却金額-売却直前簿価=売却益ですね。

そして売却益が利益=所得として法人税の課税対象になります。

売却金額が時価であることに注意

税務調査などで売却金額が時価と乖離していると認定された場合、時価で売却したものとして売却益を計算されてしまいますので注意です。

売却相手が社長、社長の親族や関係会社(グループ会社)などでなければお互いに合意した金額が時価であるとされる可能性が高いですが、売却相手が社長、社長の親族や関係会社(グループ会社)などの場合は不動産鑑定士に評価を依頼するなどして客観的に時価であることが証明できるようにしておくと安心ですね。

法人税計算上の簿価は会計上の簿価と違うことがある

過去に対象物件の減損損失を計上していた場合などは税務上(法人税計算上)の簿価と会計上(決算書上)の簿価が異なっていますので注意です。

必ず別表五(一)を見て税務上の簿価と会計上の簿価に差がないか確認しましょうね。

別表五(一)に残高がある場合は当該金額の認容分、売却損益に加減算して所得が計算されます。

グループ法人税制の適用はないか

グループ法人税制とは、100%の資本関係にある内国法人間で行なわれる一定の資産譲渡、寄附、配当、株式の発行法人への譲渡等につき、税務上は損益を認識しない仕組みをいいます。

100%の資本関係にあるグループ間の固定資産の売却の場合は売却損益は無かったものとして法人税を計算しますので注意です。

なお、連結納税を適用している場合も同様の考え方になりますね。

セール・アンド・リースバック取引に該当しないか

買主から売主に法人税法上のリース取引による賃貸をすることを条件に売買を行った場合に、その資産の種類、その売買及び賃貸に至るまでの事情などを考慮して、一連の取引が実質的に金銭の貸借であると認められるときは、その売買はなかったものとされ、かつ、その買主(リースで貸す側)からその売主(リースで借りる側)に対する金銭の貸付けがあったものとされます。

と、文章にすると難しいですが、要は売却後にリースして引き続き使う場合は売却が無かったものにされるということです。

詳細な要件は省略しますが疑わしい場合は要検討ですね。

売却高のうち消費税法上の課税売上に該当するものが消費税の課税対象

法人税は売却益に課税ですが消費税は売却高=売却収入に課税です。

ただし土地は非課税になりますので土地以外の部分の売却収入が課税対象です。

売買契約書上で土地の金額・土地以外の金額・土地以外に係る消費税の金額が分かれて記載されていると分かりやすいですね。

分かれていない場合は合理的な方法で案分計算します。

固定資産税評価額の比で案分するのが一般的ですかね。

ちなみに固定資産税精算金も売却高に含めて計算する必要があり、土地の固定資産税精算金は非課税売上に、建物の固定資産税精算金は課税売上になります。

課税売上割合の減少に注意

上記の通り土地の売却高は非課税売上になりますが土地の売却高は金額が大きくなるケースが多いのでその年度(課税期間)の課税売上割合に注意です。

課税売上割合が95%未満になることがよくありますね。

課税売上割合が95%未満になると仕入税額控除の計算で全額控除が出来ず、個別対応方式か一括比例配分方式を選択することになります。

いずれの方法でも課税売上割合を乗じて計算することになりますので課税売上割合が減少すると仕入控除税額が減少し納税額が増えてしまいますので注意です。

さらに課税売上割合が95%未満になるとリバースチャージ方式による納税の必要も生じますので注意ですね。

課税売上割合に準ずる割合の適用検討

個別対応方式・一括比例配分方式の計算において適用する課税売上割合には「課税売上割合に準ずる割合」が適用できますので検討しましょう。

「たまたま土地の譲渡があった場合の課税売上割合に準ずる割合の承認」というものがありますので国税庁HPのリンクを記載しておきますね。

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/17/07.htm

なお課税売上割合に準ずる割合が95%以上になっても仕入税額控除の全額控除対象にはなりませんしリバースチャージ方式の対象にもなりませんのでご注意ください。

簡易課税の適用を検討

建物部分の売却高が大きい場合、消費税の納税額が多額になりますね。

まあ、預かった消費税を納税するだけですので問題ないといえば問題ないのですが節税策を検討したいところです。

もし簡易課税が適用できれば「預かった消費税×40%」の納税で済みますね。

簡易課税の適用には2期前の課税売上高が5,000万円以下であることが必要です。

そして原則的には売却した期の開始前(売却した期の前期中)に簡易課税制度選択届出書を提出しておく必要がありますので固定資産の売却計画がある場合は事前に検討しておきましょう。

当然、固定資産の売却以外の消費税もシミュレーションしたうえでどちらが有利か検討しないといけないですね。

簡易課税を選択した場合は2年間は簡易課税を続けないといけない所謂2年縛りもありますのでご注意くださいね。

さらに売却対象の固定資産など高額な固定資産を前期以前の3期間に購入等している場合は簡易課税が選択できない可能性があります。

具体的には「課税事業者選択届出書」を提出して課税事業者となっている場合、又は期首資本金が1,000万円以上である場合などの新設法人に該当する場合で税抜100万円以上の固定資産(調整対象固定資産)の仕入れ等を行った場合はその期から3期は簡易課税が選択できないのです。

または税抜1,000万円以上の固定資産(高額特定資産)の仕入れ等を行った場合もその期から3期は簡易課税が選択できません。

上記は原則的な考え方ですが軽減税率の導入された令和元年10月1日から令和2年9月30日を含む課税期間や、新型コロナウイルスの影響を受けた課税期間は特例で簡易課税が適用できる可能性がありますのであきらめずに検討しましょう。

詳しくは以下の記事をご確認ください。

消費税簡易課税・課税事業者選択届(不適用) コロナ特例・軽減税率特例まとめ

まとめ

上記の説明でもかなり省略している表現がありますので固定資産の売却をされた際は税理士にご相談ください。

固定資産の売却の税務処理は慎重な検討が必要ということを覚えておいていただければ幸いです!

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