近年複雑化の一途をたどっている消費税の届出書ですが昨年の軽減税率の導入、そして新型コロナウイルスの感染拡大によりさらに複雑化してきました。
そこで今回はコロナ特例と軽減税率特例についてまとめてみたいと思います。
*分かりやすく説明するため厳密な表現を簡略化して表現している部分があります。
原則課税 ⇒ 簡易課税
前提1
基準期間(≒2期前)の課税売上高が5,000万円以下
前提2
自ら選択して課税事業者になった期から2期(2年を経過する日までの間に開始した各課税期間中)、又は期首資本金が1,000万円以上の法人の設立1期目・2期目、又は課税売上5億円超の親会社が設立した法人の設立1期目・2期目中に調整対象固定資産(税抜100万円以上)の課税仕入れ等を行った場合、その課税仕入れ等から3期が経過
前提3
高額特定資産(税抜1,000万円以上)の仕入れ等を行った場合、その課税仕入れ等から3期が経過
コロナ特例
条件
新型コロナウイルス感染症等の影響により被害を受けたこと。
実はこれはコロナ特例ではなく現行法において設けられている特例です。
消費税の簡易課税制度の適用に関しては、「災害その他やむを得ない理由が生じたことにより被害を受けた場合」、税務署長の承認により、その被害を受けた課税期間から、簡易課税の適用を受けることができます。
売上減少の条件は無く「被害を受けた」ことで特例が適用されます。
被害の状況 、被害を受けたことにより特例規定の適用を受けることが必要となった事情などを申請書に記載して提出し税務署長の承認が受けられれば簡易課税の適用を受けることができます。
被害を受けたことにより特例規定の適用を受けることが必要となった事情については「通常の業務体制の維持が難しく、事務処理能力が低下したため」ということで問題ありません。
なお、簡易選択2年縛りは適用されませんし、調整対象固定資産(前提2)や高額特定資産等(前提3)を取得した場合の制限も適用されません。
申請書
以下のリンクをご参照ください。
災害等による消費税簡易課税制度選択(不適用)届出に係る特例承認申請書(PDFファイル/169KB)
申請期限
新型コロナウイルス感染症等の影響による被害がやんだ日から2月以内
被害のやんだ日がその申請に係る課税期間の末日の翌日(個人事業者の場合は、その末日の翌日から1月を経過した日)以後に到来する場合には、その課税期間に係る確定申告書の提出期限となります。
申告書と同時に提出してもOKということですね。
軽減税率特例
条件
令和元年 10 月1日から令和2年9月 30 日までの日の属する課税期間であること。
上記の中の1日でも属する期で大丈夫ですので例えば令和2年9月1日に開始して令和3年8月31日に終了する期でもOKです。
「課税仕入れ等(税込み)を税率ごとに区分して合計することにつき困難な事情がある事業者」という条件もありますが「困難な度合いは問わない」ので、自分が困難だと思えば適用は可能です。
なお、簡易選択2年縛りの適用はありです。(2年間簡易課税を適用した後でなければ原則課税に戻れません)
調整対象固定資産(前提2)や高額特定資産等(前提3)を取得した場合は「著しく困難な事情」がある場合は認められますがこちらはかなりハードルが高く、例えばアパート建築の際の消費税還付スキーム(自販機スキーム)などを行った直後の適用は認められないことが通達に明記されています。
申請書
以下のリンクをご参照ください。
なお、コロナ特例と異なり特別な申請書は不要、上記届出書のチェック欄にチェックを入れるだけでOKです。
申請期限
適用を受けようとする課税期間の末日までです。
コロナ特例は申告書と同時で大丈夫ですが軽減税率特例は課税期間末(期末)までに提出しないといけませんので注意です。
簡易課税 ⇒ 原則課税
前提
なし
コロナ特例
条件
新型コロナウイルス感染症等の影響により被害を受けたこと。
原則⇒簡易のケースと同じくコロナ特例ではなく現行法において設けられている特例です。
「災害その他やむを得ない理由が生じたことにより被害を受けた場合」、税務署長の承認により、その被害を受けた課税期間から、簡易課税の適用をやめることができます。
売上減少の条件は無く「被害を受けた」ことで特例が適用されます。
被害の状況 、被害を受けたことにより特例規定の適用を受けることが必要となった事情などを申請書に記載して提出し税務署長の承認が受けられれば簡易課税の適用をやめることができます。
被害を受けたことにより特例規定の適用を受けることが必要となった事情については「感染拡大防止のために緊急な課税仕入れが生じたため」ということで問題ありません。
なお、「感染拡大防止のための緊急な課税仕入れ」とは、例えば次のようなものです。
・ 社員を分散して勤務させるため、別の事務所を緊急で借り上げた
・ 感染予防のため、パーティションを設置するなど増設工事を行った
・ 消毒液やマスクなどの衛生用品を大量に購入した
申請書
以下のリンクをご参照ください。
消費税簡易課税制度選択不適用届出書(PDFファイル/146KB)
災害等による消費税簡易課税制度選択(不適用)届出に係る特例承認申請書(PDFファイル/169KB)
申請期限
新型コロナウイルス感染症等の影響による被害がやんだ日から2月以内
被害のやんだ日がその申請に係る課税期間の末日の翌日(個人事業者の場合は、その末日の翌日から1月を経過した日)以後に到来する場合には、その課税期間に係る確定申告書の提出期限となります。
申告書と同時に提出してもOKということですね。
軽減税率特例
なし
簡易課税から原則課税になる場合の軽減税率の特例はありません。
課税事業者 ⇒ 免税事業者
前提1
基準期間(≒2期前)の課税売上高が1,000万円以下
前提2
特定期間(≒1期前)の期首から6か月の課税売上高と給与等支払額のいずれかが1,000万円以下
前提3
期首資本金が1,000万円以上の法人の設立1期目・2期目でない
前提4
課税売上5億円超の親会社が設立した法人の設立1期目・2期目でない
コロナ特例
条件
新型コロナウイルス感染症等の影響により、令和2年2月1日から令和3年1月 31 日までの間のうち任意の1か月以上の期間の事業としての収入が、著しく減少(前年同期比概ね 50%以上)していること。
申請書
以下のリンクをご参照ください。
新型コロナ税特法第10条第1項(第3項)の規定に基づく消費税課税事業者選択(不適用)届出に係る特例承認申請書(PDF/242KB)
なお、レアケースですが、前提3または4の期間中に調整対象固定資産(税抜100万円以上)の課税仕入れ等を行った場合、高額特定資産(税抜1,000万円以上)の仕入れ等を行った場合の課税仕入れ等から3期が経過するまでの課税事業者の場合は以下の申請書になります。
新型コロナ税特法第10条第4項から第6項の規定に基づく納税義務の免除の特例不適用承認申請書(PDF/234KB)
申請期限
その収入の著しい減少があった期間内の日を含む課税期間の申告書の提出期限
なお、前提3または4の期間中に調整対象固定資産(税抜100万円以上)の課税仕入れ等を行った場合は「その収入の著しい減少があった期間内の日を含む課税期間の確定申告書の提出期限」と「基準期間のない事業年度のうち、最後の事業年度終了の日」とのいずれか遅い日になります。
また、高額特定資産の仕入れ等を行った場合は「その収入の著しい減少があった期間内の日を含む課税期間の確定申告書の提出期限」と「高額特定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の末日」とのいずれか遅い日になります。
軽減税率特例
なし
課税事業者から免税事業者になる場合の軽減税率の特例はありません。
免税事業者 ⇒ 課税事業者
前提
なし
コロナ特例
条件
新型コロナウイルス感染症等の影響により、令和2年2月1日から令和3年1月 31 日までの間のうち任意の1か月以上の期間の事業としての収入が、著しく減少(前年同期比概ね 50%以上)していること。
なお、課税選択2年縛りは適用されません。(翌期にすぐ免税事業者に戻ることができます)
申請書
以下のリンクをご参照ください。
新型コロナ税特法第10条第1項(第3項)の規定に基づく消費税課税事業者選択(不適用)届出に係る特例承認申請書(PDF/242KB)
申請期限
その収入の著しい減少があった期間内の日を含む課税期間の末日の翌日から2月(その特定課税期間が個人事業者のその年の12月31日の属する課税期間である場合には、3月)を経過する日
軽減税率特例
なし
免税事業者から課税事業者になる場合の軽減税率の特例はありません。
まとめ
コロナ特例は今後の感染拡大状況によっては適用期間の延長や制度自体の変更も予想されますので最新の情報に注意しましょう!
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