先日の下記の投稿について10月7日に通達の改正が行われました。
年300万円以下の収入の副業で青色申告特別控除、赤字の損益通算は不可に!?
今回はパブコメに7000件超の意見が寄せられるという異例の改正です。
寄せられた意見のほとんどが改正内容に反対するものであったようですね。
結果的に改正案から大幅に変更し、私たち納税者に有利な方向になりました。
それでは改正の内容を見ていきましょう。
所得税法基本通達35-1
今回改正があったのはまず所得税法基本通達 35-1です。
この通達は公的年金等に係る雑所得と業務に係る雑所得以外の雑所得に該当する所得を例示したものです。
それまで(1)~(11)までの例示だったものに今回新たに(12)が追加されました。
⑿ 譲渡所得の基因とならない資産の譲渡から生ずる所得(営利を目的として継続的に行う当該資産の譲渡から生ずる所得及び山林の譲渡による所得を除く。)
これには暗号資産取引による所得等が該当するとのことで、暗号資産取引が雑所得に該当することが明確化されたということになります。
なお、こちらはパブコメの前後で改正内容に変更はありませんでした。
所得税法基本通達35-2
そして今回の改正のうちパブコメの前後で改正内容に変更があったのが所得税法基本通達 35-2です。
この通達は業務に係る雑所得に該当する所得を例示するとともに、それが事業所得と認められるかどうかの判定についての考え方を明らかにしたものです。
事業所得と認められるか、業務に係る雑所得になるかについては、その所得を得るための活動の規模によって判定されることが基本になります。
その活動が事業的規模である場合には事業所得に、事業的規模でない場合には業務に係る雑所得に区分されるという流れです。
この流れは今回通達上で明示されたものの、考え方としては今までと変わらずです。
でも事業的規模かどうかって線引きが難しいですよね。
そこで今回線引きの基準として設けられたのが「記帳・帳簿書類の保存があるか否か」です。
記帳とは
記帳とは事業取引の内容を「帳簿に記入すること」と理解すれば問題ないでしょう。
もちろん手書きでも問題ないですが会計ソフトに入力することも「帳簿に記入すること」になりますよ。
帳簿とは
「帳簿」には、例えば総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳などがあります。
書類とは
「書類」には、例えば棚卸表、貸借対照表、損益計算書、注文書、契約書、領収書などがあります。
記帳・帳簿書類の保存があるとは
では、上記を総合して「記帳・帳簿書類の保存がある」という状態を考えてみましょう。
請求書・領収書を保存して、それらの書類を会計ソフト入力に入力する。
そして会計ソフトで貸借対照表や損益計算書を作成して保存しておく。
これらができていれば「記帳・帳簿書類の保存がある」といって問題ないでしょう。
記帳・帳簿書類の保存がある場合は基本事業所得でOK
記帳・帳簿書類の保存がある場合は基本事業所得でOKです。
ここで「基本」としたのは個別判断が求められるケースがあるためです。
ではその個別判断が求められるケースを見ていきましょう。
収入金額が僅少と認められる場合
収入金額が例年300万円以下で主たる収入に対する割合が10%未満の場合は、「僅少と認められる場合」に該当することになります。
なお、「例年」とは、概ね3年程度の期間とされています。
営利性が認められない場合
例年赤字で、かつ、赤字を解消するための取組を実施していない場合は、「営利性が認められない場合 」に該当することになります。
「赤字を解消するための取組を実施していない」とは、収入を増加させる活動や黒字にするための営業活動等を実施していない場合とされています。
記帳・帳簿書類の保存がない場合
記帳・帳簿書類の保存がない場合は基本的には雑所得に区分されることになるのですが一部例外があります。
収入金額 300 万円を超える場合
記帳・帳簿書類の保存がない場合でも収入金額 300 万円を超えるような規模で行っている場合には、帳簿書類の保存がない事実のみで雑所得と判定せず事業所得と認められる事実がある場合には事業所得と取り扱うこととなるようです。
有無を言わせず雑所得になるケース
今までの内容を総合すると、有無を言わせず雑所得になるケースは以下のケースですね。
記帳・帳簿書類の保存が無く、年間の収入金額が300万円以下のケース
だいぶ範囲が限定されましたよね。
国税庁の図を引用
この改正について国税庁の解説資料にイメージ図が記載されていたので引用しますね。
フローチャート
オリジナルのフローチャートも作ってみましたのでご参考までに。
簡単に表現するために省略している部分や私見も含まれますのでその旨、ご了承ください。
まとめ
今回の改正で国税が最も封じたかったのは「何の根拠もない架空の赤字の事業を給与所得と損益通算して源泉所得税を還付するスキーム」だったのだと思います。
それに付随して事業といえるかどうか微妙なものも併せて雑所得にしようとして通達改正案を出したものの反対意見が想像以上に多かったため極端な脱税スキームだけを封じるように通達を修正したようですね。
真面目に(?)副業をしているサラリーマンの方々は脱税している方々のとばっちりで増税になるところでしたが、そうならずによかったですよね!
これからもおかしな改正には全力で反対の声をあげましょう!