令和元年8月27日に税制調査会が開催され、連結納税制度についての専門家会合が行われました。
私の顧問先にも連結納税制度を検討しながら事務負担の増加を懸念して躊躇しているところがあり、連結納税制度の改正動向には注目しています。
改正後の新制度は「グループ通算制度」(仮称)となる方向で議論が進んでいます。
今回の会合では計算方法の改正内容についても一定の方向性が示されましたので概要をお知らせいたします。
計算の枠組み(グループ全体で所得が多い場合)
個社毎に所得計算を行い、所得は所得、欠損は欠損で合算し、欠損の合計額を所得がある法人に所得金額の比により配分する方法で検討されています。
(税制調査会会合資料より引用)
計算の枠組み(グループ全体で欠損が多い場合)
欠損金額の比により他社へ渡す欠損の額を配分することが検討されています。
以下の例でいえばグループ全体の欠損金額600をグループ全体の所得300と通算し残りの300についてC社とD社の発生欠損金額の比で案分してそれぞれの繰越欠損金額を計算するとも考えられますね。
繰越した欠損金は翌期の個社での所得計算で使用し、使い切れなければグループの他社に配分することになると思われます。
(税制調査会会合資料より引用)
後に調査等で更正になる場合の計算
ここが重要なポイントですね。
今までの制度はグループの1社に所得などの変更があることで全体の計算をやり直す必要があり、事務負担が増大する点にデメリットがありました。
この点についてはシンプルに所得の金額が動いた法人だけで完結させる方向で検討がされています。
減額更正で欠損が発生した場合は翌期に繰越、繰越した欠損金は翌期の個社での所得計算で使用し、使い切れなければグループの他社に配分することになると思われます。
(税制調査会会合資料より引用)
従前の連結納税制度の計算について
上記の通り、個社での計算を基本とした改正の方針のため所得計算の別段の定めについても改正が検討されます。
受取配当等の益金不算入
株式区分判定の際の保有割合、短期保有株式等の判定、外国子会社配当等の株式保有割合は個社毎に計算・判定することを検討
控除負債利子額は負債利子を概算控除とすることを検討(単体申告法人も同時に対象となる可能性あり)
寄付金の損金算入限度額
連結所得金額と親法人の資本金等の額により計算している限度額を個社毎の所得・資本金等の額により計算することを検討
貸倒引当金の繰入限度額
グループ間の金銭債権を除いて限度額計算をする方法は引き続き行い、逆に連結納税制度を採用していない法人グループに対してグループ法人税制としてグループ間の金銭債権を除いて計算することを検討
過大支払利子税制の損金不算入額
純支払利子、所得金額は個社毎に計算することを検討(令和元年改正において、単体申告について、グループの要素を加味した適用免除基準を導入している)
所得税額控除
所有期間の計算単位を個社毎にすることを検討
グループ内の譲渡について譲渡を受けた法人がその元本を元から持っていたことにする取り扱いは維持することも検討
外国税額控除
税額控除限度額計算のための法人税額・所得金額・国外所得金額は個社毎に計算することを検討
特定同族会社の留保金課税
留保金の計算を個社毎にすることを検討
今後の注目ポイント
現在は所得を全て合算して所得・税額計算をしてるため中小法人の軽減税率(800万円まで15%)や中小法人の交際費の損金算入限度額(800万円)については親会社1社分しか使えないデメリットがありました。
これが個社毎の計算になればグループ内の法人それぞれで使えるため節税効果が大きくなります。
この点についてどのような改正の方向で検討されるか注目です。
その他、今回の会合では全体的な改正の方向性が示されたものの、まだまだ詳細は引き続き検討を要する状況です。
今後も検討状況を注視しお知らせしたいと思います。
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