産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律が8月2日に施行されました。
同法は産業競争力強化法や中小企業等経営強化法などを束ねた一括法となります。
改正産業競争力強化法といえば下記の投稿で解説したDX投資促進税制が目玉の一つでしたね。
【ざっくり解説】デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制
令和3年度改正で創設されたDX投資促進税制等の適用には事業適応計画の認定が必要になります。
この計画の認定制度が8月2日からスタートしました。
そして、改正中小企業等経営強化法では、M&Aによって生産性向上等を目指す経営力向上計画の認定を受けた中小企業が、計画に基づいてM&Aを実施した場合に、①設備投資減税、②雇用確保を促す税制、③準備金の積立(積立額の損金算入)の3つの税制措置が活用可能になります。
①設備投資減税(中小企業経営強化税制)
青色申告書を提出する中小企業者等が、令和5年3月31日までの期間に、認定を受けた経営力向上計画に基づき一定の設備を新規取得等して指定事業の用に供した場合、即時償却又は取得価額の10%(資本金3000万円超1億円以下の法人は7%)の税額控除を選択適用することができます。
対象となる設備に、「経営資源集約化に資する設備(D類型)」として、M&A後の設備投資によって、修正ROAまたは有形固定資産回転率が一定割合以上となる投資計画に係る設備が追加されました。
M&A後にM&Aの効果を高める設備投資を行う際に、要件に該当する場合は当該類型を活用できます。
(中小企業庁HPより引用)
②雇用確保を促す税制(所得拡大促進税制)
青色申告書を提出している中小企業者等が、雇用者給与等支給総額(企業全体の給与)が前年度比で1.5%以上増加させた場合に、その増加額の15%分を法人税額や所得税額から控除できる制度です。
また、前年度比2.5%以上の給与等支給総額の増加に加え、経営力向上計画の認定を受け、経営力向上が確実に行われたこと等の要件を満たした場合は、前年度からの増加額分について、25%の税額控除を受けることができます。
こちらは改正前の所得拡大促進税制でもあった上乗せ措置ですね。
経営資源集約化税制における経営力向上計画の認定で所得拡大促進税制の上乗せ措置の適用も可能になるとお考えいただければよいと思います。
もちろん経営資源集約化税制における経営力向上計画の認定を受けていない場合に、通常の経営力向上計画の認定を受ければ所得拡大促進税制の上乗せ措置の適用は可能です。
③準備金の積立(中小企業事業再編投資損失準備金)
これが今回の経営資源集約化税制の目玉ですね。
①と②は③のオマケ的な措置ですよね。
中小企業者のうち、令和6年3月31 日までに事業承継等事前調査(実施する予定のデューデリジェンスの内容)に関する事項が記載された経営力向上計画の認定を受けたものが、株式取得によってM&Aを実施する場合に(取得価額10億円以下に限る)株式等の取得価額として計上する金額(取得価額、手数料等)の一定割合の金額を準備金として積み立てた時は、その事業年度において損金算入できる制度です。
ただ、積み立てた準備金は積立事業年度終了日の翌日から5年(据置期間)経過後に5年間で均等に取り崩して益金算入しなければなりません。
また、据置期間中に株式等の売却など取崩し事由があった場合には,その年に一定額の準備金を取り崩して益金算入することになります。
以下がそのイメージです。
(中小企業庁HPより引用)
本税制の対象となる中小企業
本税制は、中⼩企業等経営強化法に基づく「経営力向上計画」の認定が必要となっています。
この計画については、「特定事業者等」に該当する事業者のみ提出が可能となります。
その上で、税制の適用を受けるためには、それぞれの税制ごとに、租税特別措置法上の「中小企業者等」に該当する必要があります。
- 「特定事業者等」⇒・常時使用する従業員数が2,000人以下の法人または個人
・協同組合等 - 「中小企業者等」⇒・資本金又は出資金の額が1億円以下の法人
・資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の法人または個人
・協同組合等
各制度活用の流れ
各制度活用の流れをまとめると以下の通りになります。
(中小企業庁HPより引用)
まとめ
M&Aを検討されている事業者の皆様は、是非、本税制の活用も検討してみてください!