法人が何も事業を行っていない、いわゆる休眠中でも確定申告書の提出義務はあります。
一方で何も事業を行っておらず利益(課税所得)が発生していなければ納税額がゼロであるため確定申告書を提出しなくても問題(追徴課税など)になることはないと考えられます。
そのような理由から実務的には休眠中の法人について確定申告書を提出しないことは黙認されている状態と思われます。
休眠中でも確定申告書を提出した方がいい場合
休眠中でも確定申告書を提出した方がいい場合があります。(重ねての説明になりますが本来は何もなくても提出すべきです…)
それは繰越欠損金がある場合です。
繰越欠損金がある場合は毎年度の確定申告書を提出しないと欠損金を翌期に繰り越していけないため、もし休眠状態が終わり事業を再開した際に利益が出たときに使用できる欠損金がなくなってしまいます。
念のため法人税法で確認してみましょう。
法人税法57条1項
法人税法57条10項
「連続して確定申告書を提出している場合」に限り適用することになっていますね。
地方税の確定申告書は提出すべきか
次に検討すべきは地方税の確定申告書は提出すべきかです。
法人税の繰越欠損金がある場合、大抵同額の欠損金が事業税にも存在します。
事業税も欠損金を繰り越すために毎年度確定申告書の提出が必要でしょうか。
地方税法で確認してみましょう。
地方税法72条の23
地方税法施行令20条の3
読み替えの結果、法人税の確定申告書を連続して提出していれば事業税の欠損金の規定を適用できることになりますので地方税の確定申告書は提出しなくてもOKと思われます。
ただ、自治体により独自の運用をしている可能性もありますので実際に地方税の確定申告書を提出されない判断をされる際は提出先の自治体に本当に確定申告書を提出しなくても欠損金の繰り越しができるかをご確認ください。
不安であれば地方税の確定申告書も提出しておいた方が安心ですが
欠損金の繰り越しができるか不安であれば地方税の確定申告書も提出しておいた方が安心ですよね。
しかし、法人の休眠と地方税といえばもう一つ論点があります。
均等割の納付免除です。
本来休眠中でも確定申告書を提出し均等割の納付をすることが原則ですが、自治体独自の運用により均等割の納付を免除(というか納付しないことを黙認)しているケースがほとんどです。
さらに自治体によっては確定申告書の提出があると有無を言わさず均等割の納付を求めるところもあるため均等割の納付を免れるために確定申告書は提出しないでおいた方がいい場合があるのです。
欠損金の繰戻し還付の適用を受けた場合
法人税法第80条の欠損金の繰戻し還付の適用を受けた場合は地方税法上、住民税に控除対象還付法人税額が発生しその繰越のために住民税の確定申告書を毎年度連続して提出する必要が生じます。
このケースでは均等割の免除金額と控除対象還付法人税額の繰越金額を比較検討し住民税の確定申告書を提出するか否か考える必要がありますね。
なお、欠損金の繰戻し還付の適用を受けると法人税上の欠損金と事業税上の欠損金に金額の差異が生じますがこの点について事業税の確定申告書が連続して提出が求められる規定は無いようです。
ただ、住民税の確定申告書と事業税の確定申告書は同じ様式に記載されますので住民税の確定申告書を提出する場合は事業税の確定申告書も同時に提出することになりますね。
欠損金の繰越の明細書を添付することをお忘れなく。
その他の規定で法人税上の欠損金と事業税上の欠損金に金額の差異が生じることもありますが、その場合も住民税・事業税の確定申告書は提出しておいた方が良いと思われますね。
念のため以下、地方税法53条の抜粋です。
14項に「連続して確定申告書を提出している場合に限り適用する」との記載があります。
まとめ
地方税の休眠についての運用は自治体独自の色が強く、慎重な判断が求められます。
検討の際は必ず提出先の自治体に直接確認するようにしましょう!
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