税理士業務

法人を解散・清算するまでの流れについて。税務の取扱いを中心に解説!

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創業から順調に法人が成長していくとその過程で複数の法人を同時に経営するケースがよくあります。

別事業を別法人に分社化したり、地域ごとで法人を別にしたりというような感じですね。

最近ではM&Aで法人を買ってくるというケースも増えています。

しかしその一方で法人を増やしすぎてしまい管理の手間やコストの面から一部の法人を解散・清算するケースもあります。

その場合、税務・会計的に注意しなければならない点がいくつかありますのでそれらについて解説したいと思います。

なお、今回は債務超過になるなどして会社更生、民事再生、破産、特別清算などの法的手続きによる解散・清算ではなく普通清算をする場合の解説になりますので予めご了承ください。

まずは休眠を検討する

いきなり本筋から脱線しますがまずは清算でなく休眠を検討しましょう。

現在、管理の手間やコストの面から不要と思っている法人でも将来的に何かに使える可能性があるためです。

休眠しておけば管理の手間やコストもかかりませんので。

また新たに法人を設立する場合は手間とコストがかかりますからね。

休眠中でも法人税などの確定申告書の提出義務はありますが実務的には休眠中の法人について確定申告書を提出しないことは黙認されている状態です。

詳しくは次の記事をご参照ください。

休眠会社(休眠法人)の青色欠損金の繰越について 申告書は提出が必要?提出不要?

休眠の場合、みなし解散に注意

休眠にする場合の注意点としては12年以上登記がされていない株式会社は解散したものとみなされ、職権で解散の登記がされてしまうという点があります。

株式会社の場合、役員の任期が最長で10年ですので休眠中も10年に一度は役員の重任登記をしましょう。

この登記を忘れていると過料が課されてしまいますのでその点からも役員の重任登記は必要ですね。

役員の任期が2年などの短期間になっている場合は休眠前に定款を変更して役員の任期を最長の10年に設定しておきましょう。

債務の返済

さて、いよいよ本題です。

現在活動中の法人を解散・清算に向けて動き出しましょう。

まずは債務の返済です。

債務超過に至ってはいなくとも金融機関からの借入があるケースは多いと思います。

まずは債務の返済目途が立たなくては解散・清算に移ることができません。

手元の現預金残高を確認し完済できる目途が立ったら金融機関に連絡して完済手続きしましょう。

売上・仕入取引の変更

次に売上・仕入関係の取引ですね。

ご自身が経営されている別会社、グループ会社に売上・仕入取引を移しましょう。

個々の取引先に連絡して契約変更などをしていくことになります。

経費関係取引の変更・解約

経費が発生する取引についても変更・解約を進めましょう。

オフィス賃貸の解約、電気・ガス・水道、電話、インターネット、リース契約、保険契約など別会社に契約変更するか解約するかが必要ですね。

保険契約については解約返戻金などで大きな利益が発生することがありますので注意です。

この点についての対策はまた後程。

従業員の転籍

従業員がいるようであればグループ会社に転籍させましょう。

社長以外の役員がいる場合も同様ですね、その会社を退任させ、新会社の役員に就任させることになります。

付随して社会保険関係の脱退・加入手続き、場合によっては退職金の支給なども検討しましょう。

固定資産の売却・名義変更

固定資産を保有している場合は売却するなどして名義変更しましょう。

グループ会社に売却する場合、税務的には売却金額が問題視される可能性があります(高すぎるor安すぎる)ので不動産会社や車のディーラー・販売店などに査定してもらうようにしましょう。

中古市場がなく金額が高くないものであれば固定資産台帳上の残存簿価を売却金額としても大きな問題になる可能性は低いものと思われます。

解散登記

上記の流れが完了し取引先などとの契約が終了、保有する資産も無くなってきたら解散の登記をしましょう。

解散の登記自体は難しいことはありません。

株主総会の特別決議にて解散を決議し、法務局で解散登記をすればOKです。

退職金の支給

法人が解散すると代表者は清算人となり引き続き清算業務をすることとなりますがこのタイミングで法人税法上も退職金の支給が可能です。

厳密には退職していない状態ですが国税庁の質疑応答事例でも退職金の支給が認められる旨回答されていますのでご安心ください。

念のため質疑応答事例の回答から引用しておきますね。

法人が解散した場合において、引き続き役員又は使用人として清算事務に従事する者に対し、その解散前の勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与は、所得税法上退職手当等として取り扱われています(所得税基本通達30-2(6))ので、法人税法上も退職給与として取り扱うことが相当と考えられます。

もちろん退職金を支給しないこととしても問題ないのですが解散に向けた手続きの中で保険を解約した際に大きな金額の解約返戻金が入金になり思わぬ利益が発生してしまうことがあります。

そのような場合には退職金を支給して利益を相殺する対策が有効ですね。

残余財産の確定

支払わなければならない債務を全て支払い、換金できる資産がなくなったら残余財産の確定といっていいでしょう。

(残余財産の確定時点について法的には厳密に規定されていません)

実務的には預金に最後事業年度の法人住民税均等割の支払分だけ残した状態で残余財産の確定とすることが多いです。

「支払わなければならない債務を全て支払い」とは矛盾しますが支払義務が確定し、その分の預金が残っていることで確定としています。

均等割の納税について

一般的には、法人は解散後に清算事務を行う必要があることから当該清算事務を行う事務所等があるものと推測されるため均等割の納税が必要になるといわれています。

ただ一部の自治体では解散後は均等割を課税しないという運用をしているところもあるようですので本店を管轄する自治体にご相談されるとよろしいかと思います。

この部分について解説すると長くなってしまいますので詳細な内容の解説は省略しますがポイントは「清算事務を行う事務所」があるかどうかです。

本店を売却、または賃貸借契約を解約した状態であれば均等割の免除の可能性も高いと思われます。

均等割の納税額以上の預金が残ってしまったら

均等割の納税が必要という前提ですが、均等割の納税額以上の預金が残ってしまった場合、その残りの金額は株主に分配することになります。

そして株主が受け取った分配の金額のうち、当初出資した金額を超える部分の金額はみなし配当として所得税が課税されることになります。

この点についても解説すると長くなってしまいますので詳細な内容の解説は省略しますがポイントは均等割の納税額以上の預金は残さないということです。

そのためには上記の流れの中にある退職金の支給をうまく活用しましょう。

これもまた解説すると長くなってしまいますので詳細な内容の解説は省略しますが一定の金額までは所得税がかからずに退職金として支払うことができますので事前にしっかりとシミュレーションしたうえで退職金の金額を決定し均等割の納税額以上の預金が残らないように退職金を支払っておきましょう。

残余財産の確定事業年度(最後事業年度)の確定申告

さあどうにかこうにか「預金残高=均等割の納税額」までもっていくことができればその状態で決算書を作成し最後事業年度の法人税等の確定申告をしましょう。

念のため同時に異動届にて残余財産確定の旨を届出しておきましょうね。

そこに記載した日付までを最後事業年度として申告することになります。

清算結了の登記

最後事業年度の申告も終わったらいよいよ清算結了の登記をして法人を清算しましょう。

解散の登記は比較的簡単なので社長ご自身でもできるかもしれませんが清算結了登記はやや複雑で書類も多いので司法書士などの専門家に依頼しましょう。

清算結了登記完了後

清算結了登記が完了したら税務署・都道府県・市区町村の税事務所に清算結了の旨を異動届に記載して提出しましょう。

これで全ての手続きが完了になります!

まとめ

ご覧いただいた通り、法人を解散・清算するのって結構大変なんですよね。

手間もコストも時間もかかります。

何か必ず清算しなければならない特別な理由が無い場合は冒頭にも記載しましたが休眠を検討しましょう。

そして何もせず12年以上経過すれば国が勝手にみなし解散ということで解散手続きをしてくれますので。

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