起業・創業支援

1期目の長さ(月数)を変えて消費税の免税期間を最大にしよう

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創業期の消費税検討シリーズです。

シリーズ第1回目にも記載の通り通常会社設立から2期目までは消費税の免税事業者(免税期間)になります。

できれば1ヵ月でも長く免税期間を続けたいですよね。

今回は少しでも長く消費税の免税期間を続けるための方法について検討してみました。

ちなみに個人事業者(フリーランス)の方は1月1日から12月31日までが(基準)期間として決められていて変更することができないため今回の検討の対象外です。

さて、基本のおさらいから。

2期前の課税売上高で免税事業者になれるか判定

一番オーソドックスな判定方法です。

通常は1期目の設立日から1年後の月末を決算日に設定しますよね。

例えば2019年6月3日設立であれば1年後の2020年5月31日を決算日に設定します。

そして1期目の2020年5月期の課税売上高が1,000万円を超えると3期目の2022年5月期から消費税課税事業者になります。

このケースだと1期目の2020年5月期と2期目の2021年5月期は免税事業者ですね。

2期前の課税売上高が1,000万円を超えるか否かで課税税事業者になるか免税事業者になるかを判定します。

月の売上が100万円、年間で1,200万円の課税売上で試算すると1期目の課税売上高が1,000万円を超えて3期目から課税事業者になります。

2期前が1年でない場合

2期前が1年でない場合は年換算の計算が必要です。

具体的な例で確認しましょう。

1期目が2019年6月3日の設立で半年後の2019年11月30日を決算日に設定したとします。

その場合、3期目の2021年11月期の2期前である2019年11月期は半年しかありませんので課税売上高を年換算することになります。

月の売上が100万円で1期目の課税売上高が600万円の場合、3期目の判定の際に2期前の課税売上高は1,000万円以下ですが年換算をすると600万円÷6か月×12か月=1,200万円になりますので課税売上高が1,000万円を超えて3期目から課税事業者になります。

2020年12月から課税事業者になってしまうので1期目が1年だった最初のケースに比べて半年早く課税事業者になりますね。

1期目が1年だった最初のケースより半年分多く消費税を納めなければなりません。

こういうことで1期目は通常丸々1年に設定しておいた方がよいのです。

しかしこれは設立から順調に売上が計上できるケースです。

現実は中々すぐに月100万円近くの売上が計上できないケースも多いですよね。

そんな時はこちらの記事にもある通り決算期変更を活用して免税期間を最大にしましょう。

具体的な設定の仕方

期首からしっかりと月次損益を把握し、年換算の課税売上高が1,000万円を超えた時点でその超えた月の前月末日を新たな決算日とします。

年間売上が1,200万円のケースでも右肩上がりに売上が上昇する場合、9か月目で年換算売上が1,000万円を超えますので8か月目の末を決算日に設定します。

この判断ができるのが9か月目の月間売上が判明してからになります。

9か月目の月間売上が確定するのは10か月目の頭ですね。

8か月目の末を決算日とすると通常は2か月後の10か月目の末が申告期限になりますので迅速な売上集計と判断が求められます。

事前に税務署に申請をしておけば通常決算日から2か月以内の申告が決算日から3か月以内に延長できますので併せて検討しておきましょう。

要注意なケースがある

単純に右肩上がりであれば上記の判定で決算期を短くすればよいのですが、仮に年換算売上が1,000万円を超えた9月以降の売上が減少していった場合は決算期変更しなくてもよかったということになる可能性があります。

具体的にはこのようなケースです。

結果的に1年間の売上が1,000万円に届きませんので翌々期に消費税の課税事業者になりません。

早まって決算期変更をする意味はなかったということになります。

ただ、これで課税事業者になってしまうことはありませんのでまた決算期変更後の期でいつ年換算売上が1,000万円を超えるか検討しましょう。

決算期変更をして特定期間判定対策をする

創業期の消費税シリーズ第1回目にも記載の通り期首から6か月(特定期間)の課税売上高と給与支払額が両方1,000万円を超える場合は翌期は消費税課税事業者になってしまいます。

創業時からそのような規模でスタートする場合やある時点から急激に売上・給与が増加した場合は注意が必要です。

具体的な対策法は以下の通りです。

期首からしっかりと月次損益を把握し課税売上と給与支払額が両方1,000万円を超えたら決算期変更をするのです。

決算期変更の結果、その期が7か月以下になれば期首から6か月の課税売上高と給与支払額で判定する特定期間判定をしなくてよくなります。

決算期変更をするタイミングは期首から6か月を経過した日の後です。(それより前にしてしまうと特定期間判定をする必要が生じてしまいます)

図で示すと以下の通りです。

決算期変更した場合はしない場合と比べて7か月消費税免税期間を多くとることが出来ます。

租税回避として認められない可能性は?

このように決算期を調整することが税務署に認められないのではないかと不安に思う方がいらっしゃるかもしれません。

しかし消費税法には法人税法132条のような租税回避行為に課税をする旨の規定が設けられていないため、消費税の租税回避を行っても違法とはならないのです。(税務署に否認されません)

ただし、将来、消費税の租税回避行為にも課税を行うことが検討される可能性はありますのでその点には注意が必要ですね。

念のため国税庁ホームページにも税務大学校の研究内容として以下の内容が載っていますのでご参考までに。

”同族会社等の課税に係る一考察
-同族会社等の行為計算否認に係る対応的調整を中心に-”

同族会社等の行為計算否認規定が存在するのは、所得税法、法人税法、相続税法及び地価税法に限られており、消費税法には存在しない。消費税については、事業者が、事業として、課税資産の譲渡等を、対価を得て行われていれば課税となる。同族会社等の行為計算否認規定は税務署長による引き直し規定であるので、所得税等の課税に連動して消費税の増額更正することはできないと考える。また、同族会社において法人税法132条3項の対応的調整が必要となる場面においても、法人所得の減少に連動的して消費税の減額更正を行うことはないと考える。

まとめ

決算期変更を利用して消費税免税期間を最長化する対策は慎重な判断が必要ですので税理士にご相談されることをお勧めします。

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